いわゆる「生前退位」を巡る保守系重鎮?たちの反応は
驚くほど不敬かつ醜悪なものが多かった。
これに対し、若手の論客や実務家(昭和55年以降生まれ)の
捉え方はどうか?
『文藝春秋』1月号に森健氏のレポートがある。
掲載順にその一部を紹介する。
文筆家の古谷経衡氏
「そもそも、女系・女性天皇の是非を議論すること自体がおかしいと
思います。天皇家のことなのだから、皇族が決めるべき。
…天皇ご自身の意向すら顧みられない制度はおかしいのではないか」
「体調がすぐれず、公務を長く休む雅子さまに批判が高まった際、
皇太子殿下は『人格否定発言』で公式に反論し、雅子さまを守った。
これこそ『真の漢(おとこ)』と思いました」
タレントの春香クリスティーン氏
「(8月8日のお言葉について)立場上、法律には触れないよう
気を使っておられたようですが、陛下の発言は真剣でしたし、
すごく言葉を選ばれていた。
あのビデオを見て、できるだけ陛下のお気持ちを汲みとって、
対応してあげられないかなと思いましたね」
憲法学者の木村草太氏
「皇族に対しては皇室典範が優先されるため、憲法上の基本的人権の
適用は制限を受けるとされています。それに不服を覚えたとしても、
彼らは訴訟を起こすこともできず、極めて人権を無視した法体系に
なっているのです。
今後の皇室を考えたとき、それでよいのか、もっと国民も考えなくては
いけないと思います」
国際政治学者の三浦瑠麗氏
「メッセージで示された、十分にご活動できない天皇は後進に譲るべき
という考え方には、正直、抵抗も覚えました。
それは私の国家主義的な思想面が反応したのだと思います。
でも同時に、今上陛下の『引退したい』というお気持ちに、
強い共感も覚えたのです。
その共感は、抵抗感を大きく上回るものでした。
これだけ国民の信頼を集める今上陛下が、自分のためだけでなく
国民のために退位したいというご意向をお持ちなのであれば、
国民側もそれに応えるべきではないでしょうか」
NPO法人代表の今野晴貴氏
「あのご年齢で膨大な量の公務を果たされるのは、率直に疑問に思い
ます。実際、天皇には決まった休日などもあるのか定かではない。
お疲れなどで仕事=公務をしたくないときだってあるでしょうが、
そういうときに休むことができるのか。
…天皇には職業選択の自由もない。
そんな境遇に配慮し、もっと現代的に考えるべきではないでしょうか」
東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町の老舗「及善蒲鉾店」
専務取締役の及川善弥氏
「海外を見ると、実力主義や権力闘争が起きてしまう国があります。
でも、日本には天皇という権力とは異なる存在がいて、その天皇のもと
で国民がまとまれる。頑張った人も失敗した人も、命が残っていれば
大丈夫。
陛下が訪問された被災地の人は、誰でもそうやって勇気をもらえたと
思うんです。
政治ではなく、伝統や歴史の力。
そういう方がいる国の一員でよかったなと思いましたね」
衆議院議員の村井英樹氏
「天皇のお務めには祭祀も含まれます。但し、これは宮中で行われ、
国民は見ることができない。けれど、被災地で行っていることも本質的
には『祈り』です。人々の復興や安寧を願って、現地を訪れ、祈る。
だとすれば、両陛下がなさってきたことは、そんな祭祀をわかりやすく
可視化したのではないか」
「当たり前ですが、皇室の方だって人間です。いまの体制のまま、
相当な負担を押し付け続けるあり方で、果たして皇室は持続可能なの
でしょうか」
天皇陛下の“玉音放送”があっても、平然と摂政設置論を唱え続ける
保守系「高齢」論客と比較して、いかがだろうか。