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小林よしのり
2016.10.20 13:42日々の出来事

「土人」と叫んだネトウヨをねぎらってる場合か


米軍のヘリパット移設工事の現場で、抗議活動をする市民に

向かい、機動隊員が「土人」「シナ人」と差別発言をしている

ニュース映像を見た。

 

20代の男性隊員が「どこをつかんどるんじゃ、ぼけ、土人が!」

と凄んでいる。

別の機動隊員は「黙れ、シナ人!」と叫んでいる。

これは完全にネットに影響されている人間だ。

いわゆるネトウヨである。

 

沖縄県民は戦前から「土人」と差別されていた歴史がある。

ネット民は自分が沖縄の住民だったら?と想像することが

出来ない。

もし自分の祖父母から、「昔はヤマトンチューから土人と

呼ばれて見下されておった」とか聞いていたら、どんな気持ちが

するか?と想像することが出来ない。

想像力が完全に欠如しているのだ。

 

そして、沖縄の歴史を知らない。

頭が悪いから勉強も出来ない。

例えば、わしの『沖縄論』を読んでみればいいのだが、

漫画とはいえども文字数が多いから、読めないのだ。

 

頭が度外れて悪いから、ネットの「罵詈雑言」しか読めない。

「罵詈雑言」だけが脳にインプットされた人間なのだから、

「差別」の重さがさっぱり分からない。

 

ならば、わしの『差別論』も漫画なのだから、読んでみれば

いいのだが、やっぱりネットの「罵詈雑言」だけが唯一の知識

となった彼らには読めないだろう。

ネットは人間の感情をとことん劣化させる。

「罵詈雑言マン」ばっかり生み出してしまう。

 

そもそも未開発国の辺境に住む「土人」は、近代合理主義的な

頭脳は持っていないかもしれないが、「慣習」という「知恵」

を持っている。

馬鹿にした者ではないのだが、日本では差別的な感覚で

「土人」を使ったので、差別語になっている。

 

沖縄の住民を「土人」と罵っている彼は、自分で気づいてない

だろうが、近代合理主義も、慣習も、モラルも持たない

「餓鬼」に過ぎない。

そういう人間をネットは作り出すのだ。

 

あきれたことに松井一郎大阪府知事は、「土人」は「表現が

不適切だが、出張御苦労さま」とねぎらっている。

機動隊一般には、わしもねぎらう気持ちはあるが、まず反応

すべきなのはねぎらいの言葉ではない。

公人ならば、「土人」や「シナ人」と罵倒した個人を批判

すべきである。

そんなことは人間として当然の常識である。

この松井一郎もネトウヨ並みの「罵詈雑言脳」の劣化した

人間なのだろう。

 

わしは罵詈雑言のすべてを否定はしない。

それは権力に向けて使うのは許されるのだが、虐げられた者

たちに向かって使ってはいけないのだ。

知事に向かって「常識」を教えてやらねばならない時代に

なるとはなあ。

 

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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