ゴー宣DOJO

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小林よしのり
2016.9.24 02:28日々の出来事

ギャグ漫画と風刺と社会分析


作品に対する人の批評というのは、作家にとってどう捉えれば

いいのか、本当に難しい。

 

正当で正確な批評は真摯に受け止めなければ、自分の作家生命

を縮めることになるし、間違った批評に影響されて作品を修正

したりすると、それも自分の作家生命を縮めることになる。

 

あるいは過度に評価されるのも、褒め殺しのようなもので、

作家が勘違いして間違った道を突き進んで行って、滅びること

だってある。

人の批評はよっぽど気を付けなくてはならない。

 

『ゴーマニズム宣言』と「創作漫画」は全然違う。

『ゴー宣』は正しいか否かの重みが大きいが、「創作漫画」は

面白いか否かが最重要になる。

「創作漫画」に関しては、やはり漫画雑誌の編集者が一番、

頼りになるのは間違いない。

作家と一緒に漫画を作る側にいて、年季を積んでるから、

一番的確なことを言う。

指摘されたことに従って修正していけば、確かに面白い作品に

なる確率は高い。

 

シロウトの批評はたまに当たっていることもあるが、大概は

的はずれで、ときに話にならない。

そんなものに影響されたら作品を破壊してしまう。

 

『おぼっちゃまくん』で言えば、最大の批評家は子供である。

時代はどんどん変化するが、変わらぬ感性もあり、変わって

しまう感性もある。

大人はこの時代の変化についていけない者が多い。

例えば、なぜLINEの「既読」後の反応が、子供どうしの

イジメやリンチ殺人にまで結びつくのか、分かってない大人

の方が大多数だろう。

 

もともとギャグ漫画は「風刺」精神が必要なものであって、

それは「社会科学」的な分析力や批評眼が必要なジャンル

なのだ。

最近はその社会を分析する力が漫画家になくなってきて、

「風刺」よりもシュールな世界に逃げている者が多い。

漫画しか読んできていない漫画家志望者は、絵の上手いオタク

になるから、複雑化した社会を分析する力がなくなるのだ。

それが最近のギャグ漫画の低迷に繋がっているのだろう。

 

オタク化というのは、タコツボ化と同義な部分があって、

内輪の評価に埋没する危険性がある。

今や世界中で、アトム(砂粒の個)化する現象が拡がっている

から、オタク文化が世界で受け入れられてもいるのだが、

鳥獣戯画や北斎漫画に起源を求められるギャグ漫画の真髄は、

やはり社会風刺にあるとわしは確信している。

ならばオタクなタコツボに安住しておくわけにはいかない

のである。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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