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小林よしのり
2016.6.22 23:38日々の出来事

「民主主義という病い」のフレンチの仕掛け


『民主主義という病い』のフレンチの章をバブルの後遺症と

勘ちがいしている者がいるのではなかろうか?

小林よしのりの作品を知る者であれば、『おぼっちゃまくん』

の誕生秘話を知っているだろう。

『おぼっちゃまくん』はバブル時代への復讐として始めた

作品なのだ。

 

バブル時代には、若者が「女と車とファッション」にしか

興味を抱かなくなった。

そのどれも描けない当時のわしは、何を描いてもヒットしなく

なった。

 

バブルと空想平和主義に埋没した世相を風刺するために

描き始めたのが、『誅(まるちゅう)天罰研究会』で、

浮かれた若者に天罰を下す主人公を描いたのだが、人気投票が

ビリになり、打ち切られた。

 

その後もヒットが出ず、某出版社の編集者に「あなたの時代は

終わりだ」と宣告された、それがバブルの思い出である。

 

そこから時代を憎むのではなく、徹底した笑いで皮肉るために

『おぼっちゃまくん』を描き始め、大ヒットになったのだ。

 

そしてバブルがはじけ、『ゴーマニズム宣言』の時代に繋がる。

 

わしはバブルの恩恵を受けていない。

バブルの時代を不遇に過ごしたのだ。

わしは実力のみで時代と格闘し、勝ち残ってきた。

 

『民主主義という病い』のフレンチの章は、格差社会に向けた

皮肉として、見せびらかすように描いたのだ。

これは貧困層にも、富裕層にも、両方に向けて、真の強者とは

何かを突きつける仕掛けである。

民主主義の理念である「自由」「平等」「同胞愛」を意識させる

装置として、あのフレンチの章を挟み込んでいる。

 

なぜ舛添要一になら集団リンチを行い、石原慎太郎にはそれを

しなかったのか?

その解答があのフレンチの章に込められている。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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