昨日、テレビ朝日がモハメド・アリの追悼番組として、
「モハメド・アリVSアントニオ猪木」の異種格闘技戦を
ノーカットで、しかも試合中の二人やセコンドの言葉まで
分かるようにして流していた。
当時は「世紀の凡戦」と言われていて、わしもこれじゃ
試合にならないと醒めた目で見たものだが、その後、
梶原一騎の漫画や、プロレス雑誌で、内幕を知るように
なって、評価を変えていった。
今、この一戦をテレビ朝日がノーカットで流した英断に
拍手を送りたい。
昨日は、一挙手一投足を見逃さないように、凝視したまま
見終わった。
どちらの側に立つかで見方が一変してしまうのが面白かった。
猪木の側に立てば、一発でもパンチをくらったらそれで終わり、
しかも、ほとんどのプロレス技を封じられた厳しすぎる
ルールでがんじがらめとなれば、寝たままの体制でキックを
繰り出すしかない。
アリの側に立てば、捕まったら終わり、だが相手が寝たまま
ではパンチが届くわけがない。
それでもかろうじてジャブが2回くらい入っていたが。
猪木が最初から真剣だったのに対し、アリは足が腫れ上がり
ながら徐々に口数が減っていく。
あの腫れ上がった足で、蝶のように舞って見せたりもする
精神力と、最後まで試合を続けた持久力が恐るべきで、
なにより闘争心だけはセコンドよりもアリの方が持っていた。
あの持久力があったから、ジョージ・フォアマンを逆転で
倒したキンシャサの奇跡も成し得たのだと、得心がいった。
もちろん借金だろうが、30億円もの賞金を用意して、アリの
要求をすべて飲んだルールに同意した猪木の、とてつもない
情熱には驚嘆する。
男が伝説を作るには、カネのことなんか気にしちゃならない
のだとつくづく思う。
ああいう男のゼニカネを超えた情熱は、女には絶対分から
ないだろう。
莫大なカネをかけて、あの試合を実現した猪木の凄さにも
頭が下がるが、世界チャンピオンという名誉を賭けて、
世界的には無名のアジアの男と、あんな危険な試合に臨んだ
モハメド・アリという男もつくづく凄い。
水と油のまさに異種格闘技戦だが、集中力を欠かさず見れた
のは、結局、真剣勝負の死闘の「殺気」だけだ。
昨日は真剣勝負の殺気を大いに学んだ。
たとえ作品について、この世に名を残さないチンケな輩が
ガタガタ勝手なことを言おうとも、殺気だけは失っては
いけない。
『大東亜論』も『おぼっちゃまくん』も『ゴー宣』も、
殺気だけは失ってはならない。
そんな思いを新たに誓った「アリVS猪木戦」だった。
テレビ朝日よ、ありがとう。