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切通理作
2016.4.8 15:55

「つるセコ」イズムが懐かしい

のむらしんぼさんの『コロコロ創刊伝説』さっそく

買って読んだ。

 

僕は『つるピカハゲ丸』のアニメ化『つるピカハゲ丸くん』

が好きだった。

 

題名からだと、

ハゲの子どもが活躍する漫画ということしか

わからないが、

ハゲ丸くんの一家はおばあちゃんに至るまで全員セコくて、

わずかな小銭をかすめとることだけが生きがいの人たち。

 

そのさまざまなアイデアが次々と開陳されていく。

特に印象的だったアイデアは、釣り堀に行ったハゲ丸くんが、

釣り糸を垂らしている客たちに

自分から進んで飲み物を買ってきてあげる親切をし、

小銭を貰うと販売機まで走っていく。

 

ハゲ丸くんはけっしてその小銭を

ちょろまかしたりはしない。

 

ではなんでそんな事をしてあげるのかといえば、

当時販売機は電子ルーレットに当選すると

その場でもう一缶貰えるという機能の付いているものが多く、

ハゲ丸くんはそれをせしめるため、

できるだけ多くの買い物を仰せつかって、

当る確率を増やしていたのだ。

 

そ、そこまで考えるか……。

作者自身がセコい人間になりきらなければ

決して考え付かないアイデアであろう。

 

そんな「つるセコ」と呼ばれるセコいアイデアを

毎回無数に発表して億万長者になった人が、

いまや大きな負債を抱え、それを返すために

さらに漫画を描いているというのだから、

すさまじい。

 

『コロコロ創刊伝説』第一巻は一気に読んでしまった。

子ども漫画がなくなっていた時代、

そこにこだわった人たちのドラマ。

 

「つるセコ」イズムもまた、

子どもの持つ、大人からすればわずかな金額である

お小遣いに対する

欲求などに立脚して生まれたものなのではないだろうか。

 

『つるピカハゲ丸』誕生秘話にまで到達する

続刊が楽しみだ。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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