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高森明勅
2016.3.25 17:17

男系限定の根拠

現在の皇室典範では皇位継承の資格を、
(1)皇統(2)嫡系(
3)男系(4)男子(5)皇族ーと
限定している。

歴史上、かつてない最も窮屈な“縛り”になっている。

これらの中、(3)男系限定がしばしば議論の対象になる。

では、現行典範が制定される時に男系に限定した根拠は?

当時、法制局が作成した「皇室典範に関する想定問答」に次のように
回答している。

「女系が問題になるのは、その系統の始祖たる皇族女子に皇族に
あらざる配偶者が入夫として
存在しその間に子孫がある場合であつて、
此(こ)の場合、
女系の子孫は乃(すなわ)ち皇族にあらざる配偶者の
子孫で臣下であるといふことが強く感ぜ
られ、皇統が皇族にあらざる
配偶者の家系に移つたと観念されることも免
れない」と。

つまり、八木秀次氏が日本古来の伝統に非ずとして一蹴された
父系血筋を重んずる」「武家の考え方」に他ならない
(だから「
感ぜられ」「観念される」と、かなり主観的な説明に
終始)。

更に、明治の典範(側室を前提として嫡系には限定せず)
において
法制上、初めて男系限定を規定した理由は、
伊藤博文のブレーン
だった井上毅(こわし)の「謹具意見」
によって知ることができる。

主なものは、2点。

その1つは先に挙げたのと同じ。

もう1つは、民権運動家の議論にも現れた
「男を以て尊しとなし、之(これ)
を女子の上に位せり」(島田三郎)

「男を尊び女を卑しむの慣習、人民の脳髄を支配」(沼間守一)
という当時の男尊女卑の風潮だ。

であれば、皇室存続の危機を眼前にしながら、
なお今後もこの限定を
未来永劫、維持すべきか否か、
答えは自ずと明らかだろう。

にも拘らず、数学者の藤原正彦氏は
男系を尊重することに論理的な意味はさしてない」と断りながら、
しかしそれが“伝統(!?)”である限り、
たとえ国民の大多数が支持しなくても、たとえ女性への差別であろう
とも…堅持すべき」と断言される。

そこまで言うのであれば、
先ずは男系限定を支える為に欠かせない
“側室の(伝統!)復活”
を訴えるのが(たとえ実現可能性は殆どゼロ
でも)、順序だろう。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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