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高森明勅
2016.1.3 15:10

皇室の存続を可能にする唯一の具体策

今年の新年一般参賀には約8万3000人の国民が詰めかけたという。

平成になって2番目の多さだったようだ。

わが家は3回目のお出ましに間に合い、
その時もかなり人が多かった。

しかし参賀に加わった人々でも、皇室の前途に重大な不安がある
現実を、
どれだけ深刻に受け止めておられるだろうか。

時事通信によれば、安倍政権は、一旦「白紙」に戻した女性宮家創設
を含む、
皇室活動を安定的に維持する為の検討を、本格化するらしい。

そこでは対応策として、女性宮家創設の他に、
女性皇族が皇籍離脱後も国家公務員として活動を維持する案」
検討されるとか。

後者の案はあり得ない。

以前から批判してきたように、
国民平等の原則と明確に抵触するから。

特殊な公務員を設け、それには国民の中でも特定の「血筋」の人物
しか就けない、って“
法の下の平等”にモロ反する。

また国民になった以上、「公務員」になることを辞退するのは勿論
自由だし、些かでも“強制の影”
が見えたら、皇室への国民の敬愛の念は
大きく損なわれかねない。

既に皇籍を離れて国民の仲間入りした人が、
いつまでも皇室活動を続けるのも、奇妙。

そもそも、皇室から離れた人による「皇室」活動って、何だ。

そんなことが許容されるなら、もう皇室活動は全て「公務員」に
任せて、
皇室は存続しなくてもよい、という議論を招き寄せる。

皇室と国民の厳格な区別をないがしろにする、
暴挙以外の
何ものでもない。

しかも、皇室の存続自体には一切、貢献しない。

ほんの僅かの間、危機を見えにくくするだけ。

記事には「
安倍晋三首相は女性宮家創設に慎重な姿勢を示してきたが、
首相周辺は『首相は必ずしも批判的ではない』と述べ、容認する可能性
を示唆した」と。

安倍首相もようやく事態を正しく認識し、
最優先すべき課題から
逃げない覚悟を固めつつあるのか、どうか。

さすがに、旧宮家系国民男子の“新規”
皇籍取得という無茶な話は、
選択肢から外れたようだ。

皇室の存続を可能にするのは唯一、女性宮家の創設のみ。

猶予期間は限られている。

政府も国会も真剣に取り組んで欲しい。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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