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高森明勅
2015.12.26 21:21

憲法改正と民主党

小泉純一郎元首相は『文藝春秋』1月号のインタビュー記事で、
安保関連法成立の際の安倍政権の「手法」を批判している。

私だったら民主党を味方につけたよ。
中には賛成する勢力もいるんだからさ、協力を求めればできたんだ。
俺が総理の時、
有事法制で民主党は賛成したよ。

…あと、学者が『違憲』と言った時点で一拍置くよ。

自民党が衆議院に呼んだ参考人が言っちゃったんだから、
あれは無理よ。

…憲法改正だって、安倍さんは争点にするでしょう。

国民投票やろうと言ったって、民主党を敵に回したら
憲法改正できっこないよ。

安全保障は野党第1党を味方につけなければいけない、
争点にしちゃいけないんだ」と。

これを聞いて、脊髄反射的に反発する人もいるだろう。

でも政治が信念ではなく、結果で評価される営みならば、
安保法制そのものへの批判とは別に、耳を傾けるべき指摘が
含まれているのではないか。

安倍政権が民主党を敵に回したのを誰より喜んだのは、
与党の公明党と、野党では共産党だろう。

アメリカに“奉仕する”日米防衛協力の指針(ガイドライン)再改定に
対応する為に、
安保関連法を強引に成立させて、却って憲法改正の
機運は遠のいた

憲法改正ができなければ、アメリカへの依存を深めるだけ。

そうすると、更にアメリカのご機嫌を伺う為に、
強引な国会運営を重ねることになろう。

そんなことをしていれば、憲法改正をますます手の届かない
彼方に押しやってしまう。

国会での数合わせだけでなく、国民投票も視野に入れて、
本気で憲法改正を実現したいなら、民主党とどういう形で
提携するかを、真剣に探るしかない。

そもそも自主防衛の為の憲法改正なら、
大枠での国論の一致は欠かせない前提だ。

ちなみに、大阪市長を退任した橋下徹氏は
統治機構を改革する為に憲法改正」なんて言っているようだ。

ピントが外れ過ぎ。

憲法改正の第1の目的は、言うまでもなくわが国の「独立」回復。

アメリカの“被保護国”のまま、どんな統治機構「改革」をやっても、
全く無意味か、

むしろ有害。

近頃、憲法改正の為の改正論みたいなのまで出てきて、呆れ果てる。

ポイントを明確に絞り、出来るだけ広範な連携を目指す。

それが肝要だ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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