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小林よしのり
2015.12.5 03:42政治

化血研に見る「道徳」の重要性


化血研が薬事法違反の血液製剤を長年にわたって作っていた。

しかもこの不正を組織ぐるみで隠ぺいし、当局の査察を

ごまかしていたという。

それも「薬害エイズ」事件の最中からずっとやっていたと

いうのだからあきれる。

 

最近、既視感のある事件ばかりである。

化血研の血液製剤の不正隠ぺい、正義を妄信するシールズの

学生デモ、911以降の対テロ戦争、どれもいつか見た光景

ばかりで、デジャブに陥る感覚の連続だ。

 

薬害エイズ運動は非加熱製剤で血友病の子供たちがバタバタ

死んでいたから、まさに緊急行動として当時の若者たちは

結集し、「個の連帯」で、ラップによるデモを行った。

現在のシールズは、目の前に被害者がいない、イデオロギー

の行動であって、方法論だけ薬害エイズ運動を真似ている。

 

あのとき菅直人が厚生大臣に就任しなければ、薬害エイズの

解決はなかった。

菅直人は現在、原発事故の指示の是非をめぐる件で、

自称保守派に不評だが、薬害エイズのときは、子供たちの

大量殺人を国の責任と認めて、謝罪・賠償に導いてくれた

大きな功績がある。

立派な業績があるのだから、原発事故という前代未聞の事態

の対処だけで、菅直人のリーダーシップを全否定する狭量な

世論に、与するわけにはいかない。

 

それにしても化血研にしろ、原発ムラにせよ、組織の暴走は

結局、個人の「道徳観」による「内部告発」でしか防げない

のだろうか?

システムとして、不正の防止が不可能ならば、やはり

「道徳」を貫く「個」の力が重要だということになる。

 

イラク戦争の時も、自称保守派は一匹が右向きゃ、一斉に

全体が右向くという魚群と化していたが、あの魚群の暴走

と「個人」で戦うことがいかに困難かということを、

わしは身に染みて知っている。

 

愚民の集団性に個人の「道徳」で抗うことは、今もやはり

我々の「公共性」を守るための重要なカギなのである。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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