「ゴー宣道場」の打ち合わせで、『卑怯者の島』は映画化できるか、
という話になったが、切通理作氏は日本の映画監督がいつかやら
なきゃダメだと力説していた。
高森さんもクリントイーストウッドを出し抜く映画を撮らなきゃ
だめだと言っていた。
だが、わしは無理だと思う。「日本のいちばん長い日」だって
10億もかかったという。
『卑怯者の島』を映画化したら20億くらいかかるのじゃないか?
しかも日本映画はどうしても涙腺の弱い老人向けに、メロドラマ
に仕立て上げる癖があるから、映画化するとクッサ――い筋立てに
変更される恐れがある。
日常性をまったく寄せ付けない、あのような最前線の戦場では、
現実と幻想の区別も明瞭にはつかない。
あのモノローグを映画で見ることに耐えられるかと言えば、
かなり難しいだろう。
漫画は映画を超えねばならないと思って描いてるから、
「プライベートライアン」を思わせる冒頭シーンでも、
兵士一人一人に関わる家族や恋人の手紙を重ねて、単なる駒じゃ
ないという個人性を感じるように描いた。
始めから映画に出来ない作品を意識してるので、映画化は難しい
と思う。