アメリカがすっかり「内向き」になっているという。
例えば、ピュリッツァー賞を受賞したジャーナリストの
ブレット・スティーブンズは、こう述べている。
「パックス・アメリカーナの基本的な『取り決め』は、
各国が外交面でアメリカに従うのと引き換えに、
アメリカが軍事的な保護を与えるというものだ。
アメリカの大統領がその取り決めを守らなければ、
遅かれ早かれアメリカはパックス・アメリカーナの恩恵を
得られなくなるだろう。
エジプトではそれが起きている。
化学兵器の使用は許さないというレッドラインを超えたシリアに対し、
オバマは何の行動も起こさなかった。
それを見たイスラエルとサウジアラビアは、
イランが核のレッドラインを越えても、
オバマは何も行動を起こさないのではないかと考えるようになった。
ポーランドとチェコは、
オバマがロシアとのリセット外交を宣言したとき、
裏切られたと感じた。
シリア政府とスンニ派武装組織の2つを相手に戦っている
自由シリア軍は、アメリカが軍事支援をはっきり約束したのに、
支援がいっこうに届かないことに裏切りを感じている」
「イラン、ロシア、中国の政策当局者たちは、
アメリカはアメリカ本土が攻撃されたのでない限り
武力行使には踏み切らないと見越して、
ますます大胆な行動に出ている」
「アメリカ人は、世界におけるアメリカのプレゼンスを
減らしたほうが、国内でやるべきことにエネルギーとリソースを
傾けられると考えている。
またよその国に対して、自分の問題は自分で解決してほしいと
思っている」と。
こんな状態なら、アメリカに“尽くす”安保法制を整えても、
果たしてアメリカを当てに出来るのか?
もし当てにならないなら、
制度や装備面などでの現実的な“自前の防衛力”強化を
そっちのけにして一体、何をやっているのか、ということになる。
それとも、スティーブンズ氏らの“アメリカよ、戻ってこい!”
という呼び掛けに応えて、再び「外向き」に姿勢を転換するのか?
“世界の警察官”として「世界中をパトロール」するようになるのか?
そうなったら、防衛上の自立を果たさず、
個別的自衛権の実効化にも手を着けないまま、
集団的自衛権の行使容認をひたすらアメリカにアピールして来た
日本は、アメリカが行う世界中の戦争に駆り出されることになろう。
一方、政府が国内の懸念解消に持ち出す、
集団的自衛権の「限定的」行使が、もし本当に“歯止め”
として機能したら、アメリカの期待を裏切って、
日米同盟の崩壊に繋がりかねない。
アメリカが“内向き”でも“外向き”でも、
集団的自衛権の「限定的」行使が機能してもしなくても、
軍事的な対米全面依存から抜け出さない限り、わが国は八方塞がりだ。