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小林よしのり
2015.6.12 06:19芸能など

舞台「アドルフに告ぐ」がすごく良かった


横浜で舞台『アドルフに告ぐ』を見た。

手塚治虫の名作を舞台化したものだが、素晴らしい出来だった。

知ってる役者は鶴見辰吾しかいなくて、さすがに安定した演技

を見せてくれた。

3人のアドルフを演じる役者の熱量が凄くて、女優が美しいし、

原作にない少女も印象的だった。

最初から最後まで緊張感が途切れず、見終わってしまった。

この作品のテーマの奥深さを見事に描き切った演出で感動した。

 

『アドルフに告ぐ』は「週刊文春」に連載されていたが、

当時は壮大なドラマの一端を毎週、垣間見るしかなく、難しい

話だなあと思っていたが、実際連載中はまったく人気がなかった

らしい。

だが編集部が腹を決めて最後まで描かせたから、こんな凄い

作品が生まれたのである。

単行本が発売されたら、表紙カバーが手塚の絵でなく、大人

向けの油絵みたいなものになっていて、驚いたものだ。

 

わしも現在、大人向けの、社会性や歴史性のある壮大なドラマ

を描いてみたくて、その一つが『大東亜論』だが、7月発売の

『卑怯者の島』もそういう挑戦の一つだ。

『卑怯者の島』はまさに『アドルフに告ぐ』のような大人向け

単行本の表紙にしてほしいと鈴木成一氏に頼んで、デザイン

してもらった。

 

舞台を見てから『アドルフに告ぐ』をもう一度、読み返して

いるが、やっぱり手塚の表現は上手い。

劇画に負けじと背景を描きこんでいるし、編集者が相当史料を

収集していたらしいから、考証がしっかりしている。

やっぱり編集者の役割は大きいんだよな。

 

よしりん企画のスタッフ諸君は、この作品を読んだ方がいい。

日曜日に無駄に遊んでいないで、漫画なんだから、このくらい

読みなさい。

わしは絵の描き方が気になって、ページをめくるのが遅くなる

のが辛いところだ。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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