軍事アナリストの小川和久氏がこんな指摘をされている。
「21世紀の日本の選択肢は、
(1)…『自立した軍事力』を持つか、
(2)現在の『自立できない軍事力』を日米同盟で補うにとどめるか、
の2つに1つだ。
コストとリスクを検討すれば(2)を選ぶほかに道はない」と。
コストについて、具体的には30兆円(最近の発言では23兆円)
程度の防衛費が必要と見ているようだ。
現在の防衛費が約5兆円だから、およそ6倍(ないし5倍弱)。
リスクは
「日本が自立した軍事力を持つことをアメリカは望んでいません」
(小川氏)ということ。
ところがコストについては、田母神俊雄氏と自衛隊OBが
「独立国・日本としての軍隊」を持つ為にどの位の予算が必要か、
詳細に試算していて、かなり違う数字が出ている。
同試算は「防衛省が予算編成の際…使用している積算方法を採用」。
兵器の開発や増産、更にその寿命なども考慮して、
「国軍創設」までの期間を20年と見込んでいる。
それによると、新たに年間1兆5500億円程度の防衛費の増額が
必要になるという(人件費の増額分も含む)。
この数字をどう見るか?
いわゆる「思いやり予算」をはじめ米軍関係経費に、
約7000億円が投じられている。
加えて、沖縄の米軍基地負担の見返りとして
3000ないし3500億円の振興予算が組まれている。
やがてわが国が「自立した軍事力」を備えたら、
これらの費用はほとんど無用(ちなみに、沖縄振興予算が現地に
もたらした弊害については大久保潤氏の指摘がある)。
ならば、1兆円前後が軽減されることになる。
更に、小川氏は日米同盟に全幅の信頼を寄せているが、
果たしてどうか。
米海軍大学のアーサー・ウォルドロン教授は次のように述べている。
「日中間の武力衝突が起こった場合、米政府が
…日本を本気で支援するより、中国との妥協を迫って、
尖閣諸島の領有権を放棄するよう日本に促すのではないか」
「米国が抑止力を提供するというのは神話で
…日本が安全を守りたいのであれば、英国やフランス、
その他の国が保有するような最小限の核抑止力を含む包括的かつ
独立した軍事力を開発すべきだ。
対抗する軍事力がなく、信頼できる同盟国もない日本が、
将来のいつかの時点で、日本より大きく、
核兵器を保有する侵略国との紛争に直面する可能性がある。
日本にとってそれは悪夢以外の何物でもない」と。
いざという時に、
「米国が抑止力を提供するというのは神話で」
「信頼できる同盟国もない日本」(!)
ーという“見たくない”現実を、直視しなければならない。
わが国が進むべき道は、二者択一ではなく、1つしかないはずだ。