ワクワクしている。
小林よしのり氏の幻の名作『卑怯者の島』が今、
新しく生まれ変わろうとしているからだ。
以前、触れたことがあったかと思うが、
この作品は未完のまま中断していた。
私の勝手な感覚では、あと1、2回で完結するかな、
というところで途絶えていた。
まことに残念で、続きが読みたい気持ちは高まる一方。
加えて、しばしばこんなこともあった。
自衛隊関係で地方に講演に行くと、
地元の司令官たちが一席設けて下さり、酒を酌み交わしつつ、
懇談することがある。
そんな時に、以下のようなやり取りが。
「高森先生は、漫画家の小林よしのり先生とは
お付き合いがあるんですよね」
「ええ、今のところ、まだ絶縁状は貰っていませんが」
「ならば是非、ご本人にお伝え願いたいことがあるんです」
「何でしょう?」
「実は小林先生の作品で『卑怯者の島』というのがあって…」
「おお!あれは私も愛読しました」
「それが中断したままなんです。
あれじゃあ、ナマ殺しですよ。
是非、完結させて頂きたい、とお伝え下さい」
「私も続きを読みたかったんです。
あれは戦争を真正面に据えた作品ですが、
皆さんが読まれていかがですか?」
「いやー、実に迫力があり、説得力があります。
だから、どうしても最後まで描き上げて頂きたい」
「分かりました。必ずお伝えしましょう」という具合。
私は早速、わが意を得たり、とばかりご本人にお伝えした。
ところが、小林さんの反応はこんな感じ。
「高森さん、あの作品は絵を描き込むのが大変なんだよ。
それより今、仕上げたい作品があって、
他にも取り組みたい構想があって、当面はそちらを優先したい。
いずれ機会があれば」と。
だから、その後は同様の伝言を依頼されても、
「分かりました。お伝えしましょう」とは答えず、
「なるほど。私も完成させて欲しいんです」と誤魔化すしかなかった。
私自身は諦めて、もう未完のままでも単行本にして貰いたい、
という気持ちだった。
それが小学館の担当編集者の熱意もあって、
新たな作品として生まれ変わるという。
これは楽しみ。
既にコンテが完成し、一部、下絵からペン入れへと作業が
進んでいるとか。
よりバージョンアップし、生まれ変わった『卑怯者の島』
(新しい正式なタイトルは未定。小林さんは仮に「例の大作」と
呼んでおられる)を、早く読みたいものだ。
かつて愛読者だった人たちにも読んで欲しい。
前の作品を知らなかった人も勿論。