ゴー宣DOJO

BLOGブログ
笹幸恵
2014.9.2 14:47

一度だけ♪

ライジング掲載の「もくれんのザ・神様!」、

いつも天才的な筆運びだと思いながら拝読していますが、

今回の「すっぽん事件」は爆笑でした。

そして私も思い出してしまったのです。

渋谷のスクランブル交差点で、

「一度だけ」と迫られたことを・・・。

 

名付けて「バリ島事件」。

 

8年ほど前、知人から紹介されたAさん。

私が戦跡めぐりに訪れた島を、

彼も仕事で行ったことがあると言います。

そのときはそれで話が終わったのですが、

しばらく地方勤務ののち、「東京に戻ってきた」と

連絡がありました。

そして渋谷で会うことに。

 

数年ぶりの再会。

親しく連絡を取り合っていたという

わけでもなかったので、最初はなんか、

ぎこちない。

でもだんだんと件の島の思い出話になって、

いやー盛り上がること、盛り上がること!!!

日本人で知っている人が少ない島だけに、

共通の話ができるというのは本当に嬉しい。

時間を忘れてしゃべりまくりました。

 

「もう一軒、どうですか」

Aさんが言いました。

「いいですよ」と、私。

意外にも楽しかったので、

もう少しだけ、話をしたい気分だったのです。

 

「僕、いいホテルを知っているんですけど」

彼は言いました。

「ホテル?」

ああ、そうか。ホテルのラウンジね。

近くのセルリアンホテルにも

確かラウンジがあったな。

 

「新宿なんですけど」

ん? 新宿?

電車乗るの? タクシー?

確かにあの辺にもホテルはあるけれども。

ワシントン? ハイアットかな?

ちょっとウチらには高級過ぎちゃったり

なんかしない?

 

「バリ風のホテルなんです」

は?

バリ風?

「へぇぇ、そんなホテルがあるんですかあ」

忌々しいほど無邪気に、

バリ風のバーラウンジを想像する。

 

すでに店を出て、渋谷駅前の

スクランブル交差点に差し掛かっていました。

「予約できるかな」

彼は携帯で何やら問い合わせています。

 

「予約、できないみたいです。

今、満室だそうで。

行ってみて、待ちますか?」

 

そこで初めて私は気が付きました。

 

「ラ、ラウンジじゃなくて

部屋ですか!?」

 

「そうです。室内がバリ島を

イメージした内装なんですよ」

「そこでゆっくり飲みませんか」

 

「・・・あ。いえ。それなら、帰ります」

 

スクランブル交差点の人ごみの中で、

私は引き返そうとしました。

「ええッ、そんな。きっと気に入りますよ」

「いえ・・・」
「そんなこと言わずにッ」

血相を変えたその男に、腕をつかまれました。
そしてこう言われたのです。

「一度だけでいいですから!」

「きっと気に入りますから」

「お願い、一度だけ!」

(以下、リフレイン)

 

「・・・もう結構!サヨナラ!!!」

私は男の手を振りほどき、信号が点滅する

スクランブル交差点をダッシュで

引き返しました。

 

情けない。

嗚呼、情けない。

ちょっと話が合ったからといって、

ほいほいとホテルについていくような女に

見られてたなんて!

そしてそんな男に、警戒心も持たずに

ついていこうとしていたなんて!!

腹立たしさと情けなさとが入り混じり、

悔しくて文字通り地団太を踏みました。

 

後日。

たまたま用事があって、新宿に。

駅から離れた通りに面して、

でっかい「バリ島」風のラブホテル発見!!!

こ、こ、ここかあーーーー。

 

今でもアジアンテイストなラブホテルの

前を通ると、懐かしく思い出します。

 

(※ライジングをご覧になっていない方、
意味不明の内容でスミマセン絵文字:冷や汗
ぜひこの機会に「ザ・神様」読んでみてくださいね)

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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