ゴー宣DOJO

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小林よしのり
2014.8.17 07:19日々の出来事

公と私、空転する意欲


自分自身と周囲の者の覚悟の差が凄すぎて呆然とする。

この一冊で何が何でもの勝負と、眦を決して描いているのに、

誰も分からんようだ。

わしは8月中に今描いている作品のコンテを上げたいと

必死である。

だがもうほとんどその見通しを修正しなければならないほど

の遅れが出ている。

 

わしの焦りを察することもなく、今日の夕食は外でディナー

にすると妻が言い出す。本当にむかつく。

ふざけるな、勝手に決めるなと一喝。

わしは今日中に一本ペン入れを済ませて、ただちに次の

コンテを開始したいのだ。

ものすごい意欲に燃えていたのだ。

だが仕事と言う「公(パブリック)」には、

「私(プライベート)」の安定が大いに影響する。

家族やスタッフへの気配りを考えていないと、いい仕事は

できないのも事実なのだ。

 

理研の笹井教授が自殺したのも、NHKスペシャルで小保方

さんとのメールのやりとりまでばらされたことが大きかった

だろう。

週刊誌があのような「私事」を暴露するのと、NHKが暴露

するのでは影響力が違う。

女(私)に血迷って仕事(公)をしくじったとなると、

その評価はたちまち家族(私)の信頼を崩壊させる。

もし家族が、笹井氏の社会的名声が地に落ちようと、断固

支えるという覚悟をしていれば、自殺するまでに追い込ま

れることはなかったかもしれない。

 

公的な領域と、私的な領域のバランスをとるのは難しい。

そういう煩わしさから逃れるために、昔は1ヶ月くらい

東京を離れてカンヅメしていたが、最近は体力がなくなって、

食事の栄養のバランスが崩れたり、クーラーや空調のかげんが

合わないと、喘息が出たりする。

歳をとっているのだ。もう時間がないかもしれない。

描きたいものがあるから描きたい。

描けなくなる前に描いてしまいたい。

そういう思いは強くなるのだが、仕事に集中できない煩雑な

私事が出てきて、空転していく。

描きたいと思うことは悪いことだろうか?

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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