安倍政権は、皇室存続の危機に対処する旧宮家系国民男子の
皇籍取得にも、女性宮家の創設にも手を着けないで、
ただ目先をゴマカし、国民の中に新しい「身分」を作り出す
「皇室輔佐」「皇室特使」などの検討を始めたという。
これがもし実現したらどうなるか?
甚だ非礼ながら、事態の深刻さを理解して貰う為に、
ごく簡単なシミュレーションを試みよう。
仮に、高円宮家の典子女王殿下がご結婚される前に制度化された
としよう。
典子殿下は、天皇の孫より遠い血筋なので「女王」。
従って、女性宮家の場合は対象にならない。
「皇室輔佐」「皇室特使」の場合は、どうか?
まだ制度の詳細が明らかになっていない。
ただ、およそ2つのケースが予想される。
1つは、対象外。
もう1つは「皇室輔佐」と「皇室特使」を設け、
前者に元内親王、後者に元女王が就任されるなどの場合。
但し、ご結婚によって既に国民になられた以上、
「強制」は勿論出来ない。
就任される場合も、辞退される場合もあるはず。
更に一旦、就任されて途中で辞退されることも当然、あり得る。
逆に初めは辞退されながら、
後になって就任を希望されるような場合はどうなるか?
いずれにせよ、憲法に定める「国民の権利」を前提とする限り、
かなり不安定な制度になるのは避けられない。
また、あってはならないことだが、ご本人は辞退したくても、
辞退しにくい(又はその逆の)“暗黙の強制”が働く懸念も、払拭出来ない。
そんな「圧力」がかかると、ご本人の人生にとっては無論、
好ましくないし、国民の皇室への素直な敬愛の念にも、
水を差すことになる。
また、国民としての生活に入れば当然、家事、育児、
ご近所付き合いその他、様々な用事を抱えることになる。
その上で、ご公務も要請するという話。
宮家の皇族には、皇族としての品位を保って戴く為に公費として
「皇族費」が支出される。
また宮家には、ご日常のお世話に当たる職員も配置される。
民間に嫁がれた元内親王方などが「皇室輔佐」等に就任された場合、
まさか「ご公務だけ今まで通りお願いします」という訳には行かない。
皇族に準じた公的待遇を用意するのか?
更に、皇族でもないのに「殿下」という敬称は維持するのか?
あるいは、黒田清子様をはじめ、以前にご結婚で民間に入られた方々
は、どういう位置付けになるのか?
もし、それらの方々も対象になるなら、
制度化以前に結婚された元内親王と、制度化後に結婚された
元女王の優先順位は?
そもそも、もはや皇族ではなく国民なのに、
専ら血筋によって「皇室輔佐」等のお立場に就くのであれば、
国民平等の原則との兼ね合いはどうなるのか?
更に、ご結婚後も皇室のご公務を続けることを前提とした場合、
既に典子殿下とのご結婚が予定されている千家国麿氏はともかく、
果たしてそれに同意する国民男子が今後、どれだけ現れるのか?
自分は純然たる国民でありながら、
妻は准「皇族」という、複雑かつ中途半端な立場だけに、
女性宮家に婿入りするより一層、ハードルが高くなるのでは?
逆に、そうした特殊な立場を、
自分の仕事などに利用しようとする男性も、現れないとは限らない。
あるいは、ご結婚相手が特定の政治的・宗教的な活動に熱心で
あっても、「皇室輔佐」等への就任の妨げにならないのか?
―等々、解決が求められ、危惧すべき事柄は多い。
だが、最大の問題は別にある。
それは、女性皇族が皆さまめでたくご結婚されると、
皇室にはただお1人、悠仁親王殿下だけがお残りになる、ということ。
そんな状態で、果たして妃殿下になってくれる女性が現れるのか?
もし現れなければ、皇室はそれでたちまち行き止まり。
幸い現れても、皇室はたった1組の男女だけになる。
それで「男系の男子」に限定して、
皇室が末長く存続出来る道理があるまい。
だが、そうなってからでは、もう手遅れ。
「皇室輔佐」「皇室特使」が何人もおられて、
ご熱心にご公務に当たられても、皇室そのものが存続出来なければ、
全く無意味。
政府が検討を開始したという「皇室輔佐」等、
どう考えてもお先真っ暗だ。