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高森明勅
2013.7.4 14:12

「秋篠宮摂政」論は皇位の簒奪を意味する

「秋篠宮摂政」論の正体が、
まだピンと来ていない向きもあるようだ。

ポイントは「摂政」。

摂政とは何か?

歴史上の概念としては
「天皇にかわり万機を統摂する職で…文字通り天皇を代行」する
(森田悌氏『日本古代史研究事典』)。

近代の日本では、大日本帝国憲法の第17条第2項に
「摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ」と規定。

現在の憲法でも、第5条に
「…摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ」とある。

憲法上、天皇は
「国事に関する行為のみを行」うことになっている(第4条)。

摂政は、それを丸ごと代行するのだ。

従って、ご健康な成年天皇がいらっしゃる状態で、
摂政を設けるなどということは、100%あり得ないし、
あってはならない。

それは、事実上の皇位の簒奪を意味するからだ。

にも拘らず、次代において即位される皇太子殿下を差し置いて、
秋篠宮殿下を摂政にお立てすべし、
それが「最も現実的な選択肢だ」(八木秀次氏)
と言い張っているのが「秋篠宮摂政」論。

この論では、摂政設置の根拠は皇室典範の規定ではなく、
国民の恣意に委ねられる。

或いは八木氏の場合なら、
彼の“勤務評定”の結果によることになろう。

それがいかに不遜不埒な、不敬極まる言説であるかは、
余りにも自明だろう。

それにしても、八木氏はかつて、天皇は
「人格が優れているといった能力原理で成り立っているのではない。
…完全なる血統原理で成り立っている」と強調していた
(八木氏『本当に女帝を認めてもいいのか』。
但し、「人格」を能力原理と見るのは首を傾げる)。

ところが今や、祭祀に真剣に取り組まれ、ご公務にご熱心で勿論、
皇室の直系のご血統を受け継がれる皇太子殿下でさえ、
妃殿下のご療養を理由に、
事実上の天皇「失格」宣言を平然とぶちあげるに至った。

「完全なる血統原理で成り立っている」はずだった天皇の地位が、
配偶者の健康状態に容易く左右されるとは。

これは変節なのか、それとも以前は心にもないことを言っていたのか。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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