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高森明勅
2013.1.22 01:16

国家というセーフティネット

グローバル化が進めば進むほど、
「国家」はより重大になる。

この点、誤解している向きが多いのではないか。

グローバル化が進めば、国家の存在感はどんどん小さくなる、と。

ところが、じつはそうではない。

むしろ逆だ。何故か。

「経済」は、ひたすら利益と効率を追求する。

そうすると、グローバル化はとめどなく進行する。

グローバル化の進展は、弱肉強食の世界をもたらす。

そこでのルールは、いたってシンプル。

「狼は生きろ。羊は死ね」それだけだ。

だが、誰もが「狼」になれる訳ではない。

多くは「羊」にしかなれない。

グローバル化の嵐の中、羊たちは皆、
社会の底辺に転落させられる。

しかも、羊が本当に追い詰められると、
その中から狼をも襲う怪物が現れる。

経済のみの自己運動、制約なきグローバル化の果てには、
狼にも羊にも最悪の、「勝者なき世界」が待っている。

こうした事態を回避するには、
「政治」が介入するしかない。

狼と羊たちが共存できる最適な状態を探る。

その際、政治の基盤になるのが国家だ。

この場合の国家とは、
統治機構(ステート)であると同時に、
国民共同体(ネーション)でもある。

かかる国家というリソースがあってはじめて、
政治は弱肉強食の世界で調停的機能を果たすことができる。

あるいは、弱肉強食と対立する相互扶助の原理を、
社会にカウンターバランスとして持ち込むことができる。

国家こそ、グローバル化が必然的に要請する、
最後のセーフティネットだ。

重要なのは、国政にあたる者がそのことを十分、
自覚しているか、どうかだろう。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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