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高森明勅
2012.10.5 08:51

産経新聞の皇室典範改正「断念」記事は「飛ばし」?

今日の新聞各紙は、女性宮家を巡る政府の「論点整理」の
全容について報じている。

それらによると、「論点整理」の内容は、
1つの結論に絞らないで、

(1)女性宮家創設案をメインとしつつ、
(2)国家公務員案も併記している。

産経新聞にも記事があるものの、
昨日の政府は皇室典範の改正を断念する「方針」、
という報道との関連については、全く言及がない。

他のメディアのフォローもないようだ。

ひょっとして「飛ばし」記事だった?

そうだとすると、典範改正潰しの底意が見え見え。

かなり悪質だ。

それはともかく、「整理」は
制度改正の対象を内親王に限定することを前提に、
(1)は、A、夫や子にも皇族の身分を与える案と、
B、夫や子には皇族の身分を与えない案を併記している。

当然、1ーA案を最も優先的な検討対象にしていると考えられる。

およそ妥当な判断だが、
子は結婚で皇族の身分を離れるとしているのは、
とても支持出来ない。

それでは、一代限りの宮家となり、
中長期的には皇族の減少に歯止めをかけることが出来ないからだ。

また、結婚で夫や子に皇族の身分を与えることを
「歴史上の前例はない」としているが、
男性皇族の妻も明治以前は、
結婚により皇族の身分が与えられる前例はなかった点を、
見落としてはならない。

B案は、夫や子の戸籍の扱いなどで新たな対応が
必要となることが指摘されているように、
とても現実的とは考えられない。

(2)の国家公務員案はさらに非現実的だ。

これは、尊称だけの内親王案が憲法上、
否認されている「身分」制の導入を意味することから排除され、
その代案として付け加えられたもの。

産経新聞は何故か「国家公務員化も提起」と、
この(2)だけを見出しに入れている。

女性皇族がご婚姻によって皇族の身分を離れた後、
国家公務員の立場で、
皇室のご公務を分担して頂こうというプランだ。

だが、皇室の血筋であることを根拠に、
その「国家公務員としての公的な立場を保持」
されることになるから、
やはり憲法第14条に定める
「法の下の平等」に抵触することは避けられない。

こうして(1ーA)、(1ーB)、
(2)の3案が併記されても、
まともに取り上げるべきは、
「整理」でも最優先されている(1ーA)案のみであることは、
明らかだ(もちろん、百点満点ではないが)。

「近いうちに(!?)」予定されているという解散の前に、
今の政府の責任において、
皇室典範改正の道筋はしっかりとつけて貰いたい。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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