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トッキー
2012.5.31 04:10震災・原発問題

やっぱり放射線ホルミシスは「信仰」だった!

保守系言論誌「撃論」第5号に、
『”放射線のズブの素人”
小林よしのり氏の戯言を嗤う』
と題した論文が掲載されています。

よしりん先生の
『「放射線は体にいい」説を嗤う』
(「WiLL」5月号)への反論で、
筆者は「低放射線は体にいい」という
放射線ホルミシス説を唱える
大阪大学名誉教授・中村仁信氏

ただし、明らかに編集部がつけた
と思われる煽情的なタイトル
とは異なり、中村氏には
他の保守系言論人や橋下徹のように
ハナから「漫画家のくせに」と
見下すような態度はありません。

むしろよしりん先生の論文で、
チェルノブイリ被災地の
小児甲状腺ガンを
「一種の風土病」と主張する
保守派のご老体(渡部昇一だ)
を批判したことに対して、
「いくらなんでもそんなことを言う
科学者はいないと思うのだが」

と賛同しているところなど、
好感すら持てます。

とはいえこの反論、
全く納得がいきません。

いくらこっちがズブの素人で、
向こうは放射線科の医師で
名誉教授でも、
全然納得はいきません。

中村氏は、よしりん先生が
「線量率効果」を理解していない
と批判しています。

「線量率効果」とは、
同じ放射線量でも、
一度に照射された場合と、
分割して数回、もしくは
低線量で長時間照射した場合、
影響に違いが現れる
というものです。

中村氏は、
「低線量×長時間」の場合は
影響は小さくなるというのが
「放射線生物学の基礎的常識」
と主張します。

ところがこっちは素人なりに
「線量率効果」も勉強しています。

肥田舜太郎著
『内部被曝』
(扶桑社新書)
には、正反対のことが書かれています。

1972年、カナダのアブラム・ペトカウは
「低線量×長時間」の放射線の方が
細胞膜を破壊しやすいことを発見。

それ以降の研究やチェルノブイリ事故
のデータなどの累積から、
「低線量・長時間被曝は、
あらゆる意味で
高線量・短時間被曝より怖い
ということが、さまざまな研究から
裏づけられています」

ということです。

そもそも、中村氏は
放射線の健康被害について、
「発ガンリスク」しか
挙げていません。


これは、
「ガンで死ななければ健康」
と言っているようなものです。

実際には、突然の発作で
全身を猛烈な倦怠感が襲い、
体が全く動かなくなってしまう
「原爆ぶらぶら病」をはじめ、
免疫力の低下、心臓疾患、
乳幼児死亡率や
低体重児出生率の増加、
その他多くの健康被害の
報告があるにもかかわらず、
中村氏はそれらには
一顧だにしていません。

さらに中村氏は自身が
ICRP委員を務めた経歴が
あるためか、お決まりの
ICRP擁護を展開していますが、
これについてはSAPIO4.25号で
論破済みです。
(この回には中村氏も似顔で
登場していますが、読んでいないようです)

中村氏は著書『低量放射線量は怖くない』で
「台湾の放射能マンション」
について語っています。


1982年にコバルト60を含む鋼材を
使ったマンションが建設され、
住民が10年間被曝したが、
追跡調査の結果その住民が
かえって健康になったというのです。

しかしこれには別の調査があり、
リスク減が見られないどころか、
白血病の増加などが見られていました。

よしりん先生は論文で
それを指摘したのですが、
中村氏はその件に関して
次のように書いています。


「台北のコバルト60汚染鉄筋アパートの
データは小林氏の指摘通り、
信頼性に欠ける。
出来過ぎと思わないでもなかったが、
インパクトの強さで取り上げてしまった
ことを後悔している」

誠実そうな態度にも見えますが、
その著書で中村氏は
台湾の放射能マンションの例を挙げた上で
「放射線ホルミシスで
ガン、心臓病、脳血管障害という
日本の三大死亡原因のどれもが
減ってもおかしくないんですよ」

と主張しているのです。

そして今後も、この本を手にする人の
ほとんどは、著者自身が
台湾の放射能マンションのデータを
否定したことなど知らずに読むはずです。
それは重大な問題じゃないでしょうか?

中村氏は「撃論」の論文の
まとめにこう書いています。
「ホルミシスによって
人のがん死亡が減るかどうか、
科学的な証明は難しいので、
信頼性のあるデータを
いくつか挙げておくに止めたい」

結局、
「科学的には証明されていない」
と認めているのです。

それで「信頼性のあるデータ」と
いわれても、あの放射能マンションの
データを自信満々で著書に
使っていたくらいなのだから、
信用のしようがありません。

そして極めつけには、
中村氏はこう書くのです。

「私自身は放射線科医として
40年被ばくしてきたこともあるが、
放射線ホルミシスを信じている」

「信じている」だそうです。

科学ではなく、信仰です。

もう40年被曝してるから、
その信仰がないと、
いてもたってもいられないの
かもしれませんねえ。

でも、私はその信仰を
持つつもりなどさらさらありません。

まして福島の被災地に
こんな信仰を布教しようなんて、
もってのほかです。

放射線対策は信仰ではなく、
科学に基づいて
行われなければなりません!
トッキー

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