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高森明勅
2012.5.7 10:12

拙著『歴史で読み解く女性天皇』目次と「さわり」公開

いくつかお尋ねがあったので、
5月8日発売の拙著『歴史で読み解く女性天皇』(ベスト新書、定価743円+税)の目次と、各章の「さわり」を紹介する。

第1章 危機に立つ皇室 
「これまでの歴史において『男系』継承と『側室』制度は、“セット”で機能してきた…
だから、『男系』限定にこだわるのであれば、今は廃止されている『側室』制度と『庶出』継承の“復活”を主張するのが筋だ。
しかし、皇室も国民も、そんなことを受けいれるはずがない」

第2章 日本神話の中の女性 
「世界各地の神話では、最高神は『男性』であるのが通例だ。
日本神話の最高神、天照大神が女性であることは、それらに比べて、かなり目立つ特色と言ってよい」
「シナの男系主義とは異なる血統観が、わが国には保持されていた…
それは、『男性だけ』の血統(男系)のほかに、女性の血統(女系)についても視野に入れる『双系』的な血統観だ」

第3章 女性君主のいる国・いない国
「わが国のように『双系』的な伝統を持つ国では、男女の区別より、天皇という地位の『重み』を優先するのは、
むしろ当然の態度と言えるだろう」
「5世紀後半以降、シナ文明の影響によって『男系』化へと大きく傾いていく中で、
それ以前からの『双系』と女性尊重の“伝統”も、長く保持できた」

第4章 女帝史の光と影
「『神聖王』と『世俗王』の“二重”統治は、シナ王朝や他国にはあまり類例のない、わが国のユニークな統治『形式』だろう」
「日本社会の基底的な特質は、1000年以上もの歳月を乗り越えて、みごとに維持されたと見てよいだろう。
東アジアにおける日本文明の『自立』的なポジションを示す“目安”の1つは、女帝の存在だった」

第5章 女性宮家は伝統の再発見
「『男系の男子』という法的な規定が設けられたのは、明治の皇室典範が歴史上、初めてだった。
それ以前、『養老令』は『女帝の子』にも皇位継承資格を認めていた」
「日本社会の基底にある『双系』(双方)的特質を認めてよいのであれば…『男系』限定の解除は、
シナ文明の長きにわたる影響をくぐり抜け、日本固有の伝統の“再発掘”を意味するとさえ、言えるのではないだろうか」
「皇室の存続を願うのであれば、向かうべき方向は、すでにはっきりと見えている。国民はそれを監視し、督促する義務がある。
国民統合の安定的な『軸』を、未来に確実に伝えていくことは、今を生きる日本人の責務だからである」

拙い内容ながら、一人でも多くの方に読んで頂きたいと思う。

なお恥ずかしながら、誤植の類が見つかった(何故かいつも刷り上がってから気づく)。

今、気づいているのは、以下の通り。

78ページ1行目「結婚相手」→「母親」
102ページ2行目「710」→「701」
177ページ9行目「これまでの」→「これまで」
181ページ7行目「男系に」→「男系で」
190ページ後ろから5行目「皇室」→「皇統」
同じページ後ろから1行目「ゆるがせられない」→「ゆるがせにできない」
192ページ2行目「で。」→「で、」
197ページ後ろから4行目「疑問」→「疑問符」

まだ他にあるかも。

我ながら、校正力のなさに嘆息せざるを得ない。
                        
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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