ゴー宣DOJO

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切通理作
2011.6.27 08:16

バカならぬ「インテリの壁」

前回の道場ブログを書いた後、ツイッターで、
僕と同世代と思われる方からこういう声がありました。
「自分も君が代を普通に歌ってましたが
皇室に対する知識はゼロでした。
意味を教えてくれたのは左の人でした」。

これは、そのまま僕の実感と同じです。

「君が代は、未来永劫天皇を敬うっていう歌なんだ」
「君が代は実は、まったく違う意味の詞を、
天皇を敬う意味に読み替えてるんだ」
「天皇って、働かないんだって」
「天皇には戦争責任があるんだよ」・・・・

子どもの時に天皇や君が代について
なにか囁いてきたり
意見を持っていたのは、
みんな「左」がかった人たちでした。

僕が小学校四年生の時、
ひょっとしたら戦後初めて「君が代」を
母校に持ち込んだ
音楽の先生が、
僕ら生徒にその歌の意義を教えることもなく、
ましてや天皇陛下のことも話題にしなかったのは
前のブログに書いたとおりです。

「いろいろ親だのなんだのが言ってくるが、
面倒くさいから歌うことにした、
四の五の言うやつァ勝手にしろ」
という一種投げやりな態度でした。

君が代を拒否した先生ではなく、
受け入れた先生の、この韜晦
(自分の本意などをつつみ隠すこと)
ともいえる態度は、なんだったのか。

ブログを書いて振り返ったことで
かえって自分の心に引っ掛かり、
最近は日々このことを
考えていました。

高森明勅さんが道場ブログ『今昔モノ語り』
の6/22「天皇と知識人」で、
 「知識人にとって、『天皇』はかなり躓き易いテーマではないか」と
書かれていたことを、
併せて最近毎日思い返しています。

僕がだんだん気になってきたのは
「知識人にとって」というところです。

教師もインテリの一種だとするなら、
決して「反天皇」という意味ではなく、
生徒の前で堂々と語れない
「何か」があったのではないかと
思うのです。

それは、小林よしのりさんが
「バンザイ童貞」を捨てるのに
しばらく躊躇があった、ということに
ひょっとしたら通じているのではないかと
思ってしまったのです。

この民主主義の世の中、
「日の丸」「教育勅語」「君が代」
を引きずっているなんて、
頭が悪く見えるのではないか。

天皇陛下を敬おう
なんて、決してインテリが
口にしちゃいけない・・・・・。

高森さんが、
天皇擁護論の中にも
<ポストモダン的な「擁護」派。
天皇の存在感を強烈に押し出す古いやり方ではなく、
「空虚な中心」として受け入れよう、
みたいなポーズを取る>
人たちがいると書いていましたが、

そういう人たちの中にも
「自分は価値相対主義に立ったうえで
冷静にシステムとして天皇を受け入れてるんだ」
というようなポーズがあるのかもしれないと
思いました。

八木秀次氏が、そもそも神話と接続すること自体
不合理な、「Y染色体論」にしがみついて離れないのは、
自分のプライドにこだわるがゆえ
なのでしょうか。

つまり、彼ら自身が<空虚な主体>
なのでは?
現実に対して求心力を持たず、
どういう態度を取っていいかわからない自分自身
の姿を天皇のあり方に
投影しているのではないでしょうか。

高森さんが
「天皇について殊更多くの知識を持ち合わせてはいない、
ごく普通の国民の方が、
直感的には正しく皇室の本質を
つかまえているのではないだろうか」
と信じ、
「それを言葉に置き換えるのに困難を感じていたり、
自分の皇室観に自信を持てないような人たちに、
少しでも役に立ちたい」
とおっしゃっているのに触れると、
希望の光が見えたような気がします。

インテリが価値相対主義の無気力ガスを
振り撒くと、
本来直観力を持っていた一般の人々まで
ややもすると
引きずられてしまいます

君が代不起立裁判を
特集したラジオ番組でも
電話アンケートに答えた
一般市民が
「素直に歌いたい気持ちがあるのに
こういうことがあると引っかかって
しまう」と言っていたのは、要注意です。

インテリが不要なプライドを捨て、
バンザイ童貞を捨てられるように
促すような言葉で問いかけ続けること。

自分のような立場には
それも必要だなと
思えてきました。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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