尖閣ビデオを流出させた行為が国家公務員法上の守秘義務違反罪に該当するか否かを巡り、専門家の間でも意見が分かれているようだ。
私はこの方面は全くの門外漢。
そのことをお断りした上で、現時点で以下のような受け止め方をしていることを記しておこう。
昭和52年の最高裁の判決によって、同罪が成立する為には2つの条件をクリアしている必要があるとされている。
(1)一般に知られていない。
(2)秘密として保護するに値する。
この判断基準を前提とする限り、今回の件への政治的評価とは別に、守秘義務違反罪には該当しそうにない。
まず(1)については、映像そのものは知られていなかったものの、既に国会議員が短く編集したビデオを見た段階で、メディア各社が情報として報道している。
テレビ番組ではコンピュータグラフィックまで作って再現した。
従って今回流出した部分については、事実関係そのもの、情報そのものとしては「一般に知られていない」という条件には当てはまらないだろう。
(2)はどうか。
こちらは一層、明らかだろう。
国民に秘密にすべき理由はどこにもない。
というより、政府には公開すべき義務があったと言わねばならない。
今頃になって、中国に対する外交カードとして温存すべきだった、などと言っている向きもあるようだ。
本気で言っているとも思えない。
もともと公開する気などなかったはずだ。
もし本気なら何とナイーブなことか。
今回流出したビデオなんて、中国にとってはカエルの面に何とやら、外交カードに使える訳がないことは、ビデオ流出時の中国の厚顔無恥な開き直りぶりを見れば明白ではないか。
万が一(2)が問題になるなら、ビデオの内容をメディアの取材に応えてペラペラ喋った国会議員も全員、守秘義務違反罪に引っ掛かるはずだ。
いずれにせよ、最高裁が示した基準に基づく限り、普通に判断すれば守秘義務違反罪には該当しないと考える他ないと思うが、どうだろうか。