徹底比較『フランス革命の省察』の訳し方byケロ坊
2.革命派・人権派による王室否定と女性差別の指摘
佐藤健志版(PHP研究所)
「彼らの発想のもとでは、王とてたんなる男にすぎず、王妃もたんなる女にすぎない。女は人間というより動物で、おまけにさほど高級な動物ではないとくる。」
二木麻里版(光文社文庫)
「新しい考えかたでは国王も一人の男にすぎず、王妃も一人の女にすぎません。女性は動物にすぎず、しかも最高級の動物ではありません。」
中野好之版(岩波文庫)
「この種の事物の仕組にあっては、国王は一人の男、王妃は一人の女に過ぎない。女は単なる動物で、しかも最高の位階にはない動物と見做される。」
水田洋・水田珠枝版(中公クラシックス)
「王はひとりの男にすぎず、王妃はひとりの女にすぎない。女は動物にすぎず、しかも、最高段階の動物ではない。」
訳としてはどれもほぼ同じでした。むしろここまで一致しているとエドマンド・バークは確実にこう書いてたんだなとわかって安心します。
そしてフランスの革命派は、人権を振りかざしながら男尊女卑で、保守思想の始まりのバークがそれを批判していたのは間違いありません。
フランス革命や人権派は最初からそうで、これは今の一般的な右派左派の認識とは逆なのが興味深いです(あくまで“本来の保守思想に照らして”の話であって、男系派はニセ保守なのでストレートに男尊女卑です笑)。
このことは、自称保守も、自称リベラルも、どちらにとっても押さえておかなければならない歴史的事実でしょう。人権宣言は男権宣言だったのは歴史的事実なのですから。
とりあえず松本人志を過剰に嫌ったり、中居正広をここぞとばかりに叩いたりする人がいるのは知られていますが、最近は「AV女優は表に出てくるな」とか言ってる人がXにいます(三上悠亜が帽子ブランドのCA4LAとのコラボで炎上させられた辺りから顕著)。
そういうことをやる人のうち、特に男は、自己顕示欲と承認願望からのウケ狙いで人権真理教に入信して職業差別をやりまくってるヤバい人なので気をつけましょう。
3.「prejudice」の訳し方
この項目は以下のライジングに対応しています。
「偏見は大事である」小林よしのりライジング Vol.487
佐藤健志版(PHP研究所)
「国民規模で定着した物の見方や、時代を超えて受け継がれた考え方に基づいて行動したほうが、はるかに賢明と言えるだろう。
わが国の哲学者の多くは、伝統的な固定観念を全否定するのではなく、その中にいかなる英知が潜んでいるかを突き止めようとしてきた。」
二木麻里版(光文社文庫)
「さまざまな国民とさまざまな時代をつうじて蓄積されてきた[理性の]共同銀行と共同資本を利用するほうがいいと思うのです。
わたしの国の思想家の多くはこうした一般的な先入観を否定せず、先入観のなかに生きている潜在的な叡智を掘り出すために知恵をめぐらせます。」
中野好之版(岩波文庫)
「彼らとしては国民全体と過ぎし時代の共通な銀行や元手を活用する方が好都合と考えるためで
ある。
それ故に、我が国の思想家の多くは、全体的な偏見の破砕とは逆に、彼らの機敏さをこれら偏見に潜む潜在的な叡智の発見に振り向ける。」
この点については、岩波だけが「偏見」と訳していました。
佐藤版の「固定観念」は訳語として微妙として、二木版は「先入観」となっています。全体の引用はしていませんが中公クラシックスは「先入見」でした。
「prejudice」を英和サイトで訳すと、ほぼ「偏見」と出て、ついで「先入観」なので、やっぱり「偏見」が一番いいと思いますが、言葉自体が悪いからバークに遠慮しているのでしょうか?
しかしライジング『偏見は大事である』にあった通り、バーク自身も「この啓蒙の時代にあえて言う」というスタンスです。
歴史的感覚を含んでいる偏見を「非理性的だ」として攻撃するものこそ、理性主義で啓蒙思想で人権派の左翼の発想であることは押さえておきたいところです。
言うまでもなく、日本の歴史的・常識的に当然の感覚である女性・女系天皇を公認する国民をバカにしている男系派と通じる愚民思想・選民意識ですね。
ちなみに小林先生がライジングで参考にされたのは二木版で、単語の「先入観」だけを「偏見」に置き換えたものだと思われます。
「皇位継承の危機から見た『フランス革命の省察』
~男系派が全然保守ではない23の理由」
第1回
プロローグ
1.保守は逆張りではない
2.言葉の中身、論理の有無
第2回
3.設計図の欠陥を指摘すること
4. 「人権はヤバイ」と230年前から言われていた
5.「国をどう動かしていくか」という国家観
6.王と伝統との関係
第3回
7. 王室や伝統だけでなく、キリスト教も弾圧して貶めたフランス革命
8. 「Revolution」は全然カッコいいものじゃなかった
9. 「理性主義」の危険さ
10. 福澤諭吉との共通点(保守としての生き方)
11. 革命派の女性差別に怒る保守主義の父
第4回
12.「オレ様が啓蒙してやる」という態度は非常識なもの
13.固執と改善の話
14.『コロナ論』との共通点
15.愛郷心の大事さ
16.「自由」の意味
17.固執は無能の証
第5回
18.思いっきりリベラルなことも言ってた保守主義の父
19.革命派をカルトに例えるバーク
20.男系闇堕ちした石破と、妥協が技らしい野田のことも言われてる
21.国体を保守すること
22.歴史を省みない“うぬぼれ”
23.頭山満との共通点
徹底比較『フランス革命の省察』の訳し方
第1回
1.「人権は爆弾」と言ってるところ
フランス革命で生まれた「人権」が実は「男権」だったというのは聞いていたものの、「女は動物にすぎず、しかも、最高段階の動物ではない。」とは、その男尊女卑の意識は、思っていたよりはるかに強烈だったようです。
そして「prejudice」の訳し方、ここはやっぱり、あえて言っているという意味合いからも「偏見」がいいように思うのですが、どうでしょう?