ゴー宣DOJO

BLOGブログ
笹幸恵
2024.11.6 19:36皇統問題

読売新聞社説への意見投稿。

昨日、大須賀さんのブログでも紹介されていましたが、
読売新聞の11月5日付の社説があまりにひどいので、
問い合わせフォームに意見を投稿しました。
下記、その内容です。

======================

11月5日付の貴紙社説について、あまりに看過できず、投稿いたします。
国連の女子差別撤廃委員会が「男系男子」に限定している皇室典範について
勧告を出しました。
これについての社説の主張は、不勉強による理解不足、事実誤認が目に余ります。


(1)皇統に関する不勉強

「男系男子による皇位継承は、今上天皇を含めて126代にわたる」
「一時的に女性が天皇になった例もある」
「あたかも皇室典範に女性差別があるかのような誤った印象を広げる恐れがある」

男系男子による皇位継承は、126代にわたって続いてきたわけではありません。
そのように規定されたのは明治の皇室典範からで、
井上毅が「男を尊び、女を卑むの慣習、人民の脳髄を支配する我国に至ては、
女帝を立て皇婿を置くの不可」云々と、女帝反対論を強硬に主張したためです。
「男系男子」に限定したのには男尊女卑の考えがあったことは自明でしょう。
社説を書いた論説委員はこのこともご存じないのでしょうか。
また、古代(6世紀末から8世紀後半にかけて)は、8代6人の女帝がいました。
彼女たちは内政に、外交に、その力を発揮しました。
この時期は男帝と女帝がほぼ半々。
女帝が「一時的」でも「中継ぎ」でもなく、「普遍」だった時代があったのです。
当然ながら、「男系男子」などという言葉も概念もありません。
性別にこだわらない。これこそ日本の伝統的姿と言えましょう。
論説委員は古代史について何らアップデートできていないことを
白状しているようなものです。読んでいて情けなくなりました。
恥を知りなさい。



(2)不愉快な差別心と、条約に対する不勉強

「附属機関で活動している個人が要求してくるとは、筋違いも甚だしい」
「今回の勧告は、ネパールの委員がまとめたものだ」


附属機関で活動している個人、それがネパールの委員だったから、何だというのですか。
発議がどんな個人であれ、国連の女子差別撤廃委員会が
それを「もっともだ」として改正の勧告をしたのではないのですか。
勧告までの経緯にいちゃもんをつけるなど、
駄々をこねているだけとしか言いようがありません。
また、これが日本人なら、欧米人なら、勧告をまとめた委員について言及するでしょうか。
言外に「ネパール人に日本の伝統などわかるわけがない」と
下に見ていることが伝わってきて、非常に不愉快極まりない。
自覚がないなら、なおタチが悪い。
こんな言説が論説委員会で通ったということに、
同じ日本人として情けなさを通り越し、憤りすら覚えます。

また、「政府が委員会に抗議して記述の削除を求めたのは当然」とありますが、
それこそ筋違いも甚だしい。文句があるなら、
日本政府は女子差別撤廃条約を破棄すればいいのです。
今からでも遅くない。
「我が国は女子差別撤廃条約の宣言に賛同しない。
女子に対する差別があることを憂慮しない。
女子差別を撤廃するための必要な措置はとらない」と宣言するよう、
日本政府に進言しなさい。
条約の何たるかを理解しない日本人が、あろうことか大新聞の社説を
担っているなど、悪い冗談としか思えません。


(3)憲法について
天皇の地位について、「国民の総意に基づく」と貴紙では記しています。
「皇室をどう安定的に維持していくのかは、国民が考えて決めるべき問題」
とも記しています。
現憲法下では、それはその通りです。
ならば現在、国民の8割以上が女帝を容認していることを
論説委員はどう考えているのでしょう。
「男系男子による皇位継承」は国民の総意ではありません。
にもかかわらず、貴紙はそれを歴史的無知と不勉強によって主張しているのです。
「男系男子の継承」が自明であるとする立場と、
「国民が考えて決めるべき」との主張は、
完全に自家撞着に陥っていることに気がつきませんか。
ついでに言えば、天皇の地位は「日本国民統合の象徴」です。
皇位継承を男系男子に限定して、果たして国民統合の象徴といえるでしょうか。
日本国民には男も女もいるのですよ。女性を排除してよいとする論拠は何ですか。

さらに付け加えると、男系男子による皇位継承を続けていくには、
側室制度を復活させるしかありません。貴紙が男系男子の継承を主張するのなら、
同時に側室制度の復活を主張しなければ道理に合わない。
そして将来天皇になる人のもとへ嫁いだ女性は、
「男を産め」という重圧に日々さらされます。
それがどれほど女性を苦しめるか、ほんの少しの想像力さえあればわかることです。
貴紙の論説委員には誰一人として、わかる人はいなかったのでしょうか。
現に皇后陛下はそれによって病に倒れたのです。

論説委員は耳でなにごとかを聞いていますか。
目でなにごとかを見ていますか。
心のなかでみずからの思考を批判的に吟味していますか。



私は一読者として、読売新聞の良識を疑います。
大新聞たるもの、広く世界を見渡し、深く国民の声を聞き、
そして正しく発信していこうとする気概くらいは持ちなさい。

以上




笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

次回の開催予定

INFORMATIONお知らせ