ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2024.11.4 16:14

偽善をはねのけたタフな広島DOJO

広島から帰る新幹線のなかで、そう言えばちょっと前のアメリカの映画って、核ミサイルを「世界人類救済」のために使うってなテーマが普通にあったよなと思い出していた。

『アルマゲドン』では、地球に衝突しそうな小惑星を核ミサイルで爆破する話だったし、『アベンジャーズ』は、うろ覚えだけど、アイアンマンが核ミサイルを抱えて、地球を侵略しにきた宇宙の敵に突撃するという話だったと思う。
「核爆弾を持つアメリカこそが世界を守る」というイメージも繁栄されていた作品だ。

それから、『インディージョーンズ』なんかは、核実験場に迷い込んだインディが、たまたま見つけた民家の冷蔵庫に隠れただけで助かって、きのこ雲を見上げているというあり得ないシーンがあった。

つまりアメリカは、核は肯定するのが大前提で、きのこ雲の下で何が起きていたのかなんて、「実験の効果」として収集したデータ以外には、悲惨さなんて全然考えてきていないし、被爆国への配慮もしていない。

そういう状況において、広島DOJOは、「世界唯一の原爆被爆国・日本」という事実をただ再確認する教科書的な会ではなく、その事実をどう握りしめ、どのように世界に打って出てゆけば、現実を動かしていけるのかという所まで思考を引っ張られたところに、とても興奮した。

「知恵」という言葉が本当に強く心に残っているのだけど(真理を見極めるという意味では「智慧」のほうが正しいかな)、原爆をテーマにして、あのようにタフに、偽善をはねのけ、未来に向けて本当に前進するための方法まで踏み込んだ議論を体験したのは初めてだった。

資料館をどういう展示方法にすれば、もっと伝わるものになるのかという創造性の話も、「日本人は当時アメリカ人からどう見られていたのか」という所から俯瞰してイマジネーションを膨らませる話になっていって、ものすごく有意義だったし、他のどこでもできない議論だった。
同時に、こういう創造性の話って、迷える大人しい子羊だけが寄り集まっても無理で、いざとなったら食うたるぞ、というオオカミの感性も持っている人間じゃないと発揮されないものだと思った。

平和祈念資料館の展示は、やっぱり以前に比べてずいぶん抑制的で静かな場所になっていて、あんまりやりすぎて、慰安婦や南京の記念館と一緒にされたら困るという意識も働くのかな……と思ったけれど、そもそも広島にあるのは、すべて被爆当時の本物で、どこの誰が残したものなのか、発見された場所、本人の顔まではっきりわかっている遺品ばかりというのが決定的に違う。
その重みを、「静謐な展示環境」だけでない創意工夫に持っていけたらもっと良いのだろうな。

だけど、日本人は「オバマ好き」と「お人よし」が高じて、2016年のオバマ広島来訪で、なんとなく「方が付いた」ような感じで整理してしまった人が多いのではないか?
「アメリカに実験がてら原爆を2発も落とされて、自国民を大虐殺されたのだ」という被爆国の情念や義憤は、日本人として懐に携えておかなきゃならないものだと思う。

2次会まで参加してちょっと飲みすぎたけど、いろんな話ができたのも良かった。
みなさんありがとうございました。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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