皇位継承の危機から見た『フランス革命の省察』
~男系派が全然保守ではない23の理由 byケロ坊
第4回 固執と改善の話
12.「オレ様が啓蒙してやる」という態度は非常識なもの
革命派の原動力になったのは、理性を根拠にして伝統や王室を批判する「理性主義」で「啓蒙主義」ですが、これも男系派がいつもやってることですね。
連中は隙あらばこういうことを言います。「天皇は男系なのを知らないのかよ(笑)」と。
これはつまり、「今の日本国民はバカで、天皇は男系が絶対ということを知らないから、オレ様が啓蒙してやる」というのぼせ上がった態度なわけで、完全に革命派と同じ啓蒙主義者です。
バークに忠実な保守からすれば、日本人のほとんどが男系に「啓蒙」されず、9割が女性天皇賛成になるのは当たり前です。日本に男系主義の歴史の連続性・常識などないのですから。
またバークは啓蒙主義はろくでもないとしてここまで言っています。
「「啓蒙」の名のもと、世界が闇に包まれてしまった現代においてこそ、サギを強制的に受け入れさせることが可能になったのである。」
これもわかりやすく言い換えておくとこうですね。
「「男系が伝統」の名のもと、政界が男系に包まれてしまった現代においてこそ、旧宮家サギを強制的に受け入れさせることが可能になったのである。」
13.固執と改善の話
バークは、革命派の「すべてを変える」なんてことは困難から逃げた現実逃避であり、安直なただの破壊行為で、そんなことは暴力を使えばバカでもできると言います。
その対照として挙げているのが改善です。
「対照的なのが、システムを維持しつつ、同時に改革を進めていくやり方である。」
「ここでは大いに知恵を働かせなければならない。」
本当に常識的で当たり前のことを言ってくれてるなあと思うのですが、今の自称保守・男系派の発想はこうなっています。
「すべてを変えるのは左翼だ。だから何も変えないのが保守だ!」
さすがにバカ過ぎるでしょう。保守主義の父は問題があったら向き合って改善しなさいと明確に言ってるのですが。
ちなみに自民の混成家族案は男系が前提の代物の上に、皇統の危機の解決にならないので、何もやってないのと同じです。
極めつけにバークはこういうことも言っています。
「おまけに社会システムを解体したり構築したりするとき、われわれはレンガや木材を扱っているわけではない。この場合、素材となるのは生身の人間である。彼らの地位や境遇、あるいは習慣を不用意にいじり回すなら、ひどく悲惨な結果を招くことになるだろう。」
旧宮家系案にしても、女性皇族を政略結婚させようとすることにしても、皇室の方々を駒のように扱うのが男系派の特徴です。
あらゆる点において、男系派は保守からかけ離れていることがわかります。
14.『コロナ論』との共通点
第八章にはなんと『コロナ論』との共通点もあります。
性急で、物事の自然なペースを無視し、地道に一歩一歩進む気のない革命政府を指して
「それはちょうど、健康を害したからといって、やみくもに特効薬を探し求めるばかりで、毎日の食生活については改善しないのと似ている。」
慢性の病気は、生活習慣を改めることで少しずつ治す。革命政府にはこの常識がない。
ひょっとしてこれは、たんに愚かなのでなく、人間というものを根本から信じていないせいではあるまいか?」
人間の免疫を信じていないコロナ脳とワクチン信仰の批判としても通じます。健康に対する常識は230年前のイギリスでもそれほど変わらなかったことがわかりますし、必然的に保守として『コロナ論』のテーマとも通じてきます。
ところで今自称保守派はワクチン反対とか叫んでるようですが、連中はコロナ騒動の最中には何の役にも立たなかったということは付け加えておきます。
15.愛郷心の大事さ
バークは、革命派が「自分たちの地元にこだわるのは偏狭な発想だからなくすべき」と言ってることへの反論で、こう言いました。
「地元に愛着を抱くことは、国全体を愛することと矛盾しない。いや、まずは地元を愛してこそ、国という大規模で高次元なものにたいし、個人的な事柄のごとく愛着が持てるようになるのだ。フランスのごとく巨大な王国ならば、なおさらではないか。」
『戦争論』で対応するところはここでしょうか。
かつての少年兵たちはこう考えた。命を手段に郷土(クニ)を守る英雄(ヒーロー)になると。
「自分のために」を超えたところに「公=国」が現れる。「愛する者のために」は「その愛する者を育んだ国のために」とかなり近い。
そしてこれは同時に、郷土や大切な人のことをすっ飛ばし、ひいては「私から公への経路」がなく、いきなり天皇を語りだして男系固執になっていい気になっている自称保守・ネトウヨが、肝心なところを全然わかってないことも表しています。
ちなみに『進撃の巨人』にもこういう台詞が出てきます。
「壁の中で所帯を持って人を愛せ。それができなければ同じことの繰り返しだ。」
16.「自由」の意味
『戦争論』は、「制限と束縛のない自由など実はない!」とした上で
「自分を一番自由にしてくれる束縛は何か?それを大事に思う心を育てよう」と問いかけました。
バークは、「英知や道徳を伴わない自由とは何か?」それは「愚行、背徳、狂気の蔓延」になるとして「自由には道徳が不可欠なのだ」と言いました。
ここでもまたかなりの部分で主張が重なります。
実際に革命フランスは、恐怖政治になる自由や、ギロチンの自由、すっかり混乱した後でナポレオンに収拾させてもらう自由を手に入れていますね。何が良かったんですかね、それは?
自由自由と連呼されても、国家体制を丸ごとひっくり返す自由や、王を殺してしまう自由などは否定されるべきというのは、ごく常識的な感覚です。
繰り返しになってしまいますが、圧政下のチベット・ウイグル・香港の民が「革命の自由」を望むのはわかりますが、立憲君主制のイギリスと日本にとっては拒絶すべきものですし、当時のフランスにとっても革命の必要性はなかったと『省察』には書かれています。
17.固執は無能の証
「物事をなるべく変えないまま、そのあり方を改善する。これができるかどうかこそ、政治家のよしあしをめぐる評価の基準と言えよう。現状をひたすら維持するのも、抜本的改革へと猪突猛進するのも、低俗な発想にすぎず、ロクな結果をもたらさないのである。」
「現状をひたすら維持するのは低俗な発想」と明確に言われてますが、男系派のニセ保守の方々は保守主義の父に反論したらどうですかね。
愛子さまに皇太子になっていただくことは、もちろん「物事をなるべく変えないまま、そのあり方を改善する」ことです。
バークは終章でもダメ押しでこう言っています。
「特定の主義主張に、ひたすら凝り固まるのは正しくない。自分の使命を果たすためなら、いつでも姿勢を柔軟に変えられる者こそ、真の首尾一貫性を持っているのだ」
「小林よしのりは昔は良かった」は男系固執ネトウヨやアンチの定番のフレーズですが、ただ脳が化石化してるだけです。
この点について現場からの知見から言えば、仕事の行き着く先を自分で考えずに、上司の言うことを聞いているだけの人にも、守備一貫性というものはありません。責任も発生せず、ただ手を動かしていればいいのでラクでもあります。
実際自営業以外の多くの人はそうしてそうですが、ではそれは本当の意味で仕事してることになるでしょうか?
前に書いたゲームクリエイターの桜井政博氏は「常にユーザーの目線になって考えることが大事です」と言っていました。
“ユーザー”を“仕事の成果を受け取る人”とすると、受け身で、上司に気に入られるかどうかで仕事をしている人は、仕事を受け取る人のことなんて考えていないですよね。
少なくとも、一身独立して一国独立す=一人一人が個人として自立して、その考えを国に活かしてこそ、国も独立できるという姿勢とはかけ離れています。
ただ手を動かすことが得意な人はいるし、それが日本人の気質に合うことも、それによって高度経済成長を達成して今の日本になったり、製造業のクオリティが高いこともわかっていますが、そういった指示待ちの姿勢は国家の危機の前では役に立たないでしょう。
【バックナンバー】
第1回
プロローグ
1.保守は逆張りではない
2.言葉の中身、論理の有無
第2回
3.設計図の欠陥を指摘すること
4. 「人権はヤバイ」と230年前から言われていた
5.「国をどう動かしていくか」という国家観
6.王と伝統との関係
第3回
7. 王室や伝統だけでなく、キリスト教も弾圧して貶めたフランス革命
8. 「Revolution」は全然カッコいいものじゃなかった
9. 「理性主義」の危険さ
10. 福澤諭吉との共通点(保守としての生き方)
11. 革命派の女性差別に怒る保守主義の父
「固執」する者は、何も考えたくないだけの者、
「固執」するのは無能の証し。
これまた明快この上ありません。
それにしても、何も考えたくない無能者なら何もしなけりゃいいのに、無能なくせにプライド(というか見栄)と行動力だけある者がいるわけで、そういうのが最も社会に害を為す者であり、革命家になっちゃう者だったりするんでしょうねえ。
さあ、本シリーズは明日完結です!