PRESIDENT ONLINEに、宗教学者の島田裕巳氏による、愛子天皇待望論に関する論考が掲載されました。
当文には、冒頭から
2023年6月に、小林よしのり氏が『愛子天皇論 ゴーマニズム宣言SPECIAL』(扶桑社)を刊行して以来、愛子天皇待望論が活況を呈している。
という記述があり、愛読者として喜んだのもつかの間。これは、「愛子天皇論という書籍のテーマに大きな誤解を生む危険がある」と感じました。
特に一番問題と感じたのが
もちろん、愛子天皇が誕生したからといって、それがそのまま皇位の安定的な継承に結びつくわけではない。それでも、小林氏などが、愛子天皇待望論を展開するのは、秋篠宮家に対する不信の念があるとともに、愛子内親王が、悠仁親王のように天皇の傍流ではなく、直系だからである。
人をひきつける能力は、カリスマ性とも言えるし、スター性と言うことができるが、それは天性のものである。たんにその地位にあるからといって、カリスマ性が発揮されるわけではない。悠仁親王からは、そうしたカリスマ性を感じられないが、愛子内親王にはそれがある。それこそが、国民の一致した見方ではないだろうか。
という部分。この記述だと、「愛子天皇論」の中で秋篠宮家に対する不信論が展開されていると誤解される可能性が大きいし、「カリスマ性」の記述は、その背後にまで踏み込まないと、それこそ単純な「人気投票」的な捉えられ方をされかねません。
愛子天皇論の中では、性別を問わない直系長子優先の双系継承という「仕組み」についての主張に加え、確かに愛子さま個人に対する記述もあります(まもなく発売の「愛子天皇論2」に収録されるはずのエピソードでは、よりその観点のものが多くなります)。
しかしそれは、単なる「カリスマ性」というふわっとした概念で述べられているのではありません。
例えば、愛子天皇論p.32の次のコマ
天皇は血統のみに甘んじることなく、今上陛下、上皇陛下も、限りなく深い想いを胸に全身全霊でお務めを果たされてきました。それを、皇室という聖域において間近で触れ続け、ご自身も研鑽を重ねられた愛子さまは、皇室に継承される精神性をも引き継がれ、大多数の国民から愛される、素晴らしい皇族女性へと成長された。
それは単なる偶然ではなく、ご両親であられる両陛下をはじめとする「皇室の意思」も拝察されます。
愛子天皇論は、単純な「制度論」「人物論」ではなく、文字通り日本という国の根本部分にまでつながる「天皇論」の一環に他なりません。
これは、週刊誌ゴシップ的な怪情報に踊らされて秋篠宮家バッシングを行っている者が「その裏返しで」愛子天皇待望を謳うのとは、「愛子さまを皇太子に」というスローガン的な文言は同じになっても、根本の部分はむしろ真逆と言えます。
島田氏の記事には、深い学識に基づかれた興味深い記述も多いだけに、その対比で「カリスマ性」部分の記述が非常に短絡的に見えてしまい、大きく意義を落としていると感じました。
ぜひ、表層的なゴシップの狂騒からずっと深い場所での、新たな論考を発表される事に期待しています。