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高森明勅
2024.3.11 08:33日々の出来事

「なぜ性別はあるのか?」その生物学的な回答が興味深い

 

『文藝春秋』3月号に、進化生物学者で
総合研究大学院大学の学長だった長谷川眞理子氏の
興味深い記事が載っている。

同氏はそこで、「なぜ性別があるのか?」オス·メスの
性別が生まれた理由を明快に述べておられる。

「そもそもなぜ『性』はあるのか。
多くの人は、『繁殖のため』と思われるでしょう。
しかし『性』を介在させずに『繁殖』する生物も
数多くいます(無性生殖)」

「有性生殖から『繁殖』という要素を差し引くと、
オスとメスの『遺伝物質の交換』という要素が残ります。
無性生殖の子供は、親のコピーです。
それに対して、有性生殖の子供は、親とは少しずつ違ったところを
持っています。
『性』の本質はこの『遺伝子の組み換え』にあると考えられています」

「なぜ『遺伝子の組み換え』を行なうのか。
『子供に多様性をもたせる』ことで、環境や変化、とくにウイルスや
細菌などの寄生者に対する防御機能を高めるためです」

オスとメスの有性生殖により、「遺伝子の組み換え」を通じて
多様な個体を生み出すことが可能になり、その「多様性」によって
環境の変化を乗り越えて生き延びることができる生き物が、
地球上に多く残った。
その為に、生物の多くにオス·メスの性別が確認できる。

これは納得しやすい説明だろう。

なお有性生殖の場合、配偶子は①受精しやすいことに
特化した→小さくてよく動く「精子」と②生き残りやすいことに
特化した→大きくて動かない「卵子」の“2つ”しかない。
その為に、配偶子レベルでは性は原理的に2つしかあり得ない。

その一方で、「個体」全体のレベルではオス·メスの区別に
「曖昧さ」や「連続性」「中間系」などが生じ得る。
ヒトの場合も含めて、そのプロセスやメカニズムなども
同記事では説明してあり、私は面白く読んだ。

それにしても、オス·メス双方の親から遺伝子を受け取り、
それを混ぜ合わせて親の単なるコピーではない多様性を持つ
子供を生み出す為に「性別」が現れたというのは、
男系と共に女系にも意味を認める双系的な血統観の
生物学的な基礎と言える事実ではあるまいか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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