ゴー宣DOJO

BLOGブログ
ゴー宣ジャーナリスト
2024.2.18 07:00ゴー宣道場

五重塔から得た生きるヒント

新装開店
「ゴー宣ジャーナル&エッセイ」
第一弾はこちらです!

 


 

こんにちは!
DOJOサポーター関東支部の、にしやんです。

私は建築関係の仕事をしている為、先日、勉強も兼ねて建築の構造に関わる展示会に行ってきました。

「感覚する構造 – 力の流れをデザインする建築構造の世界 –」
https://what.warehouseofart.org/exhibitions/sense-of-structure_first-term/

そこには古代建築から現代建築、そして月面構造物まで、数十点の構造模型が展示されていました。

そのうちの一つに五重塔の模型がありました。
実は私、五重塔の構造からは、生きる上で幾つものヒントをもらってきました。

五重塔といえば、法隆寺の五重塔は有名ですね。
現存する世界最古の木造建築で、実に1300年もの間、幾度の地震や台風を受けても倒れていない建築物です。
なんでそんなに強いんだろうって思いませんか?
一体どんな構造をしているのでしょうか。

法隆寺五重塔の構造を簡単に説明すると、独立した五つの層が下から積み重ねられており、塔の真ん中を木の柱(心柱)が貫いています。

五重に積み重ねられた各層は、がっちりと結合されているわけではありません。継ぎ手や仕口によって接合されている為、所謂「遊び」があり、地震の際には揺れるよう設計されています。
では、なぜ倒れないのか?

簡単にいうと地震の際には、五つの層が互い違いに揺れることで揺れを吸収しています。さらに塔の真ん中を貫く心柱は閂の役割を果たし、塔が大きく変形するのを防いでいます。
また心柱も塔本体とは違う方向に揺れることで地震の揺れを相殺し、内部から制震作用を働かせているともいわれています。
精密でありながら柔軟な建物、それが五重塔です。

このような構造を、今は「柔構造」と呼びます。
柳が風を受け流すように柔かく変形し、地震力を弱め、吸収するという構造理論です。

これに対して「剛構造」という理論があります。
剛構造は強固な基礎と、柱や梁をがっちりと緊結し、壁を入れて建物の変形を防いでいます。地震力に対して、いわば真っ向から強い力で対抗するという理論です。

私はここで「柔構造」「剛構造」のどちらがいいのか、などという話をするつもりはありません。

日本の気候風土、災害、さらには木材の性質などを全て熟知した職人の知恵と工夫と技の結実である、伝統工法で建てられた五重塔から、私は何を学び、そしてそこから未来に何を見るのかをよく考えるのです。

一昔前まで、建築業界は男社会でした。 
単に男性が多いというだけでなく、会社の中の男性で、男尊女卑の考えを持っていない人を私は見たことがないかもしれない、というくらい男社会でした。

そして時代は、第二次安倍政権が打ち出した「女性が輝く社会」政策の真っ只中。
私の勤めていた会社もその流れに乗ったのか、最初の女性管理職としての白羽の矢が、私に立てられてしまいました。

でもそこで待っていた現実は、安倍氏の言う「全ての女性が輝く社会」なんていうものではく、男性陣からのひどい嫉妬と嫌がらせ、そして孤独でした。

今まで協力的に仕事をしてくれていた男性達ですら、急に私から距離を取るようになりました。
「女のくせに」「お前も偉くなったもんだなぁ?俺に指示するつもりか?」「だから独身なんだろ」「偉いんだから全部自分でやれよ」「単に上に気に入られただけだろ。調子に乗るな」
そんな言葉を、表から陰から言われる日々が始まったのです。

私は、馬鹿にされたくない、負けたくないという一心でガッチガチに固い鎧を纏って、必死に男性に負けないようにと朝から深夜まで働きました。
社内で女性管理職の見本が無い中、様々な外圧や仕事のプレッシャーに対して「強くて揺るがない」のが正しい在り方だと思い込み、それを体現しようとしていました。
でも本当は苦しくて、毎日毎日疲れ果てていました。

ある日、会社のお手洗いでふと鏡を見上げると、そこにはひどく怖い顔をした女性が立っていました。
変な話ですが、それを自分だと認識するのに数秒かかったんです。そして、「そうだ、私って女性だったんだ。しかもこんな顔して働いてたんだ。」と気づいた時に初めて、この働き方では続かない、自分が潰れてしまうって思ったんです。

「管理職はこうあらねばならない」「後に続く女性のためにも男性に負けてはならない」そんな事ばかり意識していたように思います。
でも管理職でなかった時には上手く仕事を回せていたし、周りとの関係も良好でした。
試行錯誤の結果、役職としての責任はちゃんと背負った上で、あとは女性として自分らしく、でも譲れない部分は、五重塔の心柱のように自分の中に持ちながらやっていこうと考えを改めました。
そうすると徐々に仕事がうまく回り出し、全員で結果を出すことも出来ました。

今の日本社会を見ても「遊び」がないと感じます。
一度失敗すると、人生終わりってほどに叩かれる。
いつの話だってくらい昔のことまで蒸し返して全員で叩き、社会的に抹殺しようとさえする社会。
そして日本の文化は壊され、色の無い、つまらなくて息苦しい社会へ向かっていると感じます。

五重塔は日本の気候風土から考え抜かれた伝統工法で建てられています。
そして、その構造理論は日本最初の超高層ビルである霞ヶ関ビルに活かされ、現代のスカイツリーにも活かされています。

1300年倒れない五重塔から、みなさんは何を思うでしょうか。
私は人として、女性として、日本人として、五重塔のようにしなやかに生きていけたら、といつも思っているのです。

 

 


 

 

「女性として」とか「女らしく」とかいう言葉が出てきたら、たちまち身構えてしまうような刷り込みが出来上がりつつあるような昨今。
しかし、そうなったら次は「日本人として」もダメとか言われて、しまいにはグローバルな「人間として」しか許されないことになりそうです。万国共通の「人間」なんてないのに!

どんなに外から圧がかかっても「柳に風」と受け流し、取り入れる者は取り入れ、要らないものは放出する、そういう「柔構造」的な感覚が日本人ではなかったのでしょうか?
五重塔から感じ取れることは、様々にありそうです。(時浦)

 

 

ゴー宣ジャーナリスト

次回の開催予定

INFORMATIONお知らせ