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大須賀淳
2024.2.2 11:49その他ニュース

余韻とCall to Action

この時期になると、映像編集の講師をしている学校での成績付け業務がやって来ます(成績というのは、学生側だけじゃなく、付ける側にとっても色々ストレスフルなものですね…しみじみ)。

 

学生に提出させた課題作品を何十本も観ていると、「ある傾向」が顕著なことに気付きます。それは、

 

「余韻」を活かせてない作品がとても多い

 

これは個々人のセンスやスキルに依らない全体的な傾向で、かなりアイデアや技巧をこらした作品でも、終りの部分の処理(映像や音声のフェードアウト、ラストカットの扱いなど)が「雑」で、ぶつ切れ的に感じるものがとても多い。

 

ほんの数秒の修正で印象が激変するものも多く、可能な場合は手を加えた例を実際に見せたりもしますが、その他の部分に光るものがある学生ほど「何でここに気が回らなかったんだ?」と不思議に思う事も多々あります。

 

一応、授業の中でも「重要なポイント」として扱っているはずなので、教える側としては「ちゃんと伝わっていなかったのか…?」と反省して、次期からさらに伝え方を工夫しようと思うポイントでもあるのですが、同時に一つの推論が浮かびました。

 

これは「倍速視聴」と同じく、ネット経由での動画視聴の影響が大きいのでは?

 

動画だけでなく、ネット上のコンテンツでは「Call to Action(CTA)」(観た後の「具体的な行動」を喚起する)という概念が重要視されます。

 

ネット動画の終了部分って「チャンネル登録してください!」「この動画もお勧めですよ!」「よかったらWebサイトも観てね!」と、ありとあらゆる行動を促されますよね。有料のサブスクで映画、アニメ、ドラマなどを観ていても、エンディング部分では早々に「次はこれどう?」という提案が表示されます。

 

たしかに、この形態での視聴に慣れちゃうと、余韻の効果を十分に感じられないのも無理はありません。

 

現状を悪者にしているようですが、かく言う自分も、特に広告動画の講義をする時などは、CTAの重要さをことさら強調するので、時流に従順な戦犯の一人である事は間違いありません。

 

さて、このように時代を憂うような事を書いた上で急に狡猾になりますが(笑)、こうした「コンテンツの消費構造」が明確になる事は、造り手にとってはむしろ「福音」なんです。状況を「武器」として活用できるから。

 

多くのライバルが「雑」になっている部分に注力して活かす工夫をすれば、比較的容易にその部分での「トップ集団」に入れる。長期間「生き残っている」クリエイターは、多かれ少なかれ、こうした戦略を(意識的、無意識の両面で)実践していると思います。

 

「流行」が流行として流布するような段階では、その主流はすでにレッドオーシャン(激戦区)になっている場合はほとんど。

 

一方、激戦区が明瞭になればなるほど、ほとんどの人が注目していないブルーオーシャン(新天地)も明瞭となります。

 

ブルーオーシャンを模索しつつ、本当に必要な時はレッドオーシャンの中で死闘を繰り広げる気概を持つ。この自分の中で「策士」と「戦士」が同居する感覚って、背中でにらみ合う虎と龍じゃないが((c)クレイジーケンバンド「タイガー&ドラゴン」)、現実と対峙して行くのにすごく大切だと思うんですよね。

 

講師業を行う者であるからこそ、まずは率先して現実とバチバチに切った張ったするヤクザ的状況の中に身を投じて行きたいと思っています。

 

というわけで、いま自分の中で一番「ヤクザな案件」である(笑)「歌謡曲を通して日本を語る」明日の配信、ぜひリアルタイムでご視聴ください!

https://live.nicovideo.jp/watch/lv344154620

(↑これがCall to Actionの実践例(笑))

大須賀淳

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