12月16日、年内最後の高森稽古照今塾。
この塾は元々「爆笑目からウロコ塾」又は「熱血目からウロコ塾」
という名前を考えていた。
だが残念ながら、それらは結局、採用を見送ることになった。主に20代·30代の若い社会人を対象とし、今年で第11期目になっている
(第1期から毎年受講してくれている熱心な塾生が何人もいる)。今期のテキストは拙著『はじめて読む「日本の神話」』(展転社)だ。
サブテキストは中村啓信氏訳注『新版 古事記』(角川ソフィア文庫)。
初心者にストーリーの流れを頭に入れて貰う為の現代語訳は、
池澤夏樹氏のもの(河出書房新社)を使っている。月に一回の開催で、塾の後は必ず少人数の懇親会を行っている。
その懇親会の席上、女性の塾生(彼女は今期の塾のサブリーダー)
からこんな質問を受けた。「塾の中で、先生がしょっちゅうエンターテイメントの
話題を取り上げられるのは何故ですか?」と。私は本題に入る前に、皇位継承問題の現況や様々な時事問題の他に、
エンターテイメント系の話をなるべく取り上げるように心がけている。
質問した女性は勤務先の会社で最近、エンターテイメント関連の
部署に移ったので、気になったようだ。塾生諸君の職種は様々。向上心が強く真面目な若者たちだ。
しかし、エンターテイメント方面への関心はいささか薄い印象がある。
藤井聡太八冠の偉業や、RIZNの鈴木千裕選手がアゼルバイジャンで
大方の予想を裏切って、見事にフェザー級のベルトを獲得した件
などにも、どれほど関心があるか。この日は、上映中の「あの花が咲く丘で、また君と出会えたら」
(成田洋一監督)の話からNHKの朝ドラ「ブギウギ」に繋がり
(どちらも俳優の水上恒司君がヒロインの恋人役で出演、わが家には
テレビが無いので「ブギウギ」はU-NEXTで視聴)、前日、会食した
作詞家の森由里子さん(「ドラゴンボール」の主題歌などを作詞)
から戴いたCD「アマテラス」の一部をプレイヤーで流したり、
先頃公開されたNetflixオリジナル作品「PRUTO」の話題に絡んで、
原作の浦沢直樹氏の作品の更に元になった手塚治虫氏の
『鉄腕アトム⑬地上最大のロボットの巻』(手塚治虫漫画全集、講談社)
も、会場に持ち込んでいた。エンターテイメントを素材にすると、幅広く身近な入口から、
意外と深く本質的なテーマにも、余り敷居が高い感じがなく近付ける、
という利点がある。それに、私自身、一流のエンターテイナーからは学ぶところが
多いと考えている。
例えば私が講演を行う場合、一種のライブコンサートのようなつもりで
臨んでいる気分がある。
勿論、歌をうたったり、楽器を演奏したり、踊ったりはしない。
だが、会場を盛り上げる呼吸とか、間の取り方、身体を動かす流れ、
何より情念など、勿論まだまだ学び足りないが、多いに参考になる。
「笑い」は勿論、私の講義や講演には欠かせない最も大切な要素だ。塾生たちの人生をより豊かにする為に、エンターテイメント自体の
魅力や楽しさも、及ばずながら伝えたい気持ちもある。
私自身が趣味も特技もない、無芸無才の人間だからこそ、意識して
好奇心旺盛であり続けたいという側面もあるかも知れない。以前、塾と別枠で吾峠呼世晴氏『鬼滅の刃』全23巻を読了した
メンバーだけ集まって、「語る会」を開いたこともあった。
真剣に楽しく、それが私の流儀だ。私の教え子たちを中心に、高森流の日本神話への理解をベースにした
「神話劇」も作られ、既に何回か上演して好評を博しているようだ。
多芸多才で、チャレンジ精神に富む若者たちには、尊敬あるのみ。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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