「東大一直線」の昔から、人気投票で嫌いな主人公は
東大通が一位だった。
みんなが嫌っているのに、不思議なことにヒットする、
強烈に嫌っている読者がいる一方で、強烈に好きになる
読者がいるというのが、わしの作品だった。
『おぼっちゃまくん』もそうだし、『ゴー宣』シリーズも
そうだし、常に常に嫌われつつ、熱烈なファンがいた。
万人に愛される漫画を描いたことがない。
描けないのだ!
それなのに、打ち切りになった失敗作も含めて、大ヒット
を狙っている。
山っ気なしに漫画家なんてやってられるかという感覚だ。
インドで『おぼっちゃまくん』のアニメが視聴率1位に
なったと聞けば、日本でもやっぱり万人に愛される漫画が
描けるんじゃないかという野心が再び燃え盛ってくる。
この歳じゃもう無理だろうと思いながら、野心が消える
ことはないというのは、いったい何なんだろう?
山っ気が消えることはない。
人間は歳を取れば澄み渡った無の境地になれると思って
いたのに、全然ダメだ。
だが、人間は必ず夢を諦めるときが来るのだ。
わしのような煩悩の塊でも、いつか諦めるときがくる。
そのときまでは「今」を生きるしかない。
どんなにつまらん世の中でも、自分の「今」をとことん
味わって生きるしかない。