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高森明勅
2023.11.14 08:00皇統問題

皇位継承問題、焦点は継承の安定化、最大の障害は女性蔑視

皇位継承問題の焦点は、いかに皇位継承の安定化を図るか、
という一点だ。

もちろん、どのような制度改正を行なっても万全は期し難い。
そうではなくて、行き詰まることが分かり切っているルールから
少しでも安定化に舵を切ることが狙いだ。

産経新聞(11月7日付)に以下のような
自民党関係者の発言が紹介されていた。

「立民(立憲民主党)や共産(党)は『人権侵害』や
『女性蔑視』という観点で対峙してくるだろうが、それは違う。
『先人が紡いできたルールを守ろう』という話だ」

「先人が紡いできたルール」とは何か?

皇位継承資格を「男系男子」に限定したのは
明治の皇室典範以来のこと。
それは側室制度とセットだった。

側室不在で非嫡出·非嫡系による継承可能性が
全面的に排除されたにも拘らず男系男子限定のままという
無謀極まるルールは、昭和典範が歴史上初めて採用した。
致命的な欠陥ルールと言うしかない。

それを本気で「先人が紡いできたルール」と
思っているとしたら、無知の程度が甚だしい。
もし明治典範のルールを金科玉条のように扱いたいなら、
側室の復活を叫ばなければ首尾一貫しないし、無責任だ。

側室が不在で少子化が進む現代でも、
ミスマッチな無謀ルールにしがみつく思考停止の異常さ。
その背景にあるものは何か。

「女性蔑視」「男尊女卑」のメンタリティ以外には考えにくい。
天皇·皇后両陛下のお子様にお健やかでご聡明な
敬宮殿下がおられても、ただ「女性だから」という“だけ”の
理由で皇位継承資格を認めない今のルールは、
やがて皇位継承そのものを行き詰まらせる。

それでも、昭和典範で初めて採用された
無理筋なルールを「先人が紡いできた」などという
ファンタジーを生み出してまで固執するのは、
まさに底なしの「女性蔑視」以外の何ものでもあるまい。

追記
今月のプレジデントオンライン
「高森明勅の皇室ウォッチ」は11月24日に公開される。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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