令和の皇室には今のところ「皇太子(直系の皇嗣)」が
ご不在のままだ。
勿論、傍系の「皇嗣」ならおられる。
秋篠宮殿下が現在、皇嗣でいらっしゃる。しかし、皇太子と傍系の皇嗣を“全く同一”と見ることはできない。
勿論、共通点もある。それはどちらも皇位継承順位が
“第1位”であられること。これは見逃せない。しかし、皇太子が次代の天皇に即位されることが
確定したお立場なのに対して、傍系の皇嗣の場合は、あくまでも
“その時点で”皇位継承順位が第1位であられるにとどまる。
皇太子と傍系の皇嗣の根本的な違いはこの一点だろう。
畏れ多いが、秋篠宮殿下の場合も同じだ。内閣の意思によって「立皇嗣の礼」という前代未聞の
儀式が執り行われても、お立場自体に変更はない。
これについて、無知か、思い込みか、間違って理解する向きが
少なくないようだ。秋篠宮殿下は、ご年齢が天皇陛下より僅か5歳お若いだけ。
なので、陛下がご高齢を理由に退位される時には、
秋篠宮殿下も既にご高齢になっておられる。
従って、それから即位されるという展開は、現実には予想しにくい。皇室典範でも、皇太子(及び皇太孫)と傍系の皇嗣の間に、
明確な区別を設けている。
最も重大な違いは、次の通り。皇太子の場合、当然ながら「皇籍離脱」の仕組みが一切適用されない。
これに対して、傍系の皇嗣はその適用の可能性が全面的には
排除されていない(第11条)。これは極めて大きな違いだ。次に、摂政に就任した皇族は、摂政そのものが廃止されない限り、
たとえ傍系の皇嗣が成年に達したり、故障が無くなっても、
摂政の任を譲らない。
但し、唯一の例外として、相手が皇太子(又は皇太孫)の場合だけは、
その任を譲らなければならない(第19条)。
傍系の皇嗣に対する皇太子の優越は明らかだ。皇太子と傍系の皇嗣について、皇室典範がこのような
差別化を図っている為に、先の皇室典範特例法では、大急ぎで
その手当てをする必要があった(第5条)。その他、皇太子のお住まいは「東宮御所(とうぐうごしょ)」
という天皇のお住まいに準じた呼称なのに対して、傍系の皇嗣の
お住まいは一般の皇族方と同じく「宮邸」だ。
現在、皇嗣であられる秋篠宮殿下のお住まいは、大がかりな
改修工事を終えられても、呼び方は「秋篠宮邸」のままで変更はない。又、皇太子が外出されることを「行啓(ぎょうけい)」と申し上げる。
天皇の「行幸(ぎょうこう)」の次に敬意を込めた表現だ。これに対して、傍系の皇嗣の場合は、一般の皇族方と同様に「お成(な)り」。
皇太子妃も皇太子と同じ「行啓」なので、それより格下の呼び方になっている。これらに加えて、皇居勤労奉仕団へのご会釈は、
昭和から平成にかけて天皇とは別に「皇太子」からも賜るのが通例だったが、
令和の現在、「皇嗣」であられる秋篠宮殿下は、
それをなさっておられないようだ。これは無論、天皇陛下からのご会釈も含めて、何ら義務ではなく、
国民の側からお願いするのも全く筋違いだ。
ここでは、単にこうした事実があることを紹介するまでなので、
その点、くれぐれも誤解のないように(何でもかんでも秋篠宮家
バッシングに繋げようとする憂慮すべき傾向が一部にあるので、念の為)。【高森明勅公式サイト】
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