現在のジャニーズ騒動のような会社ごと吹き飛ばす勢いには及びませんが、1990年代初頭は「言葉狩り」「表現規制」に基づくキャンセルの動きが激化している時期でした。
この流れを主導したのが、少し前の1988年に発足した「黒人差別をなくす会」。定番の絵本だった「ちびくろサンボ」を絶版に追い込んだほか(現在は復活)、手塚治虫や藤子不二雄などの一部作品を出版停止、カルピスのシンボルマークを変更させるなど、あらゆる方面に影響をもたらしました。
この「会」ですが、最初は小学4年生の子供を含む、活動家の家族3名で結成されたもの。ほんの少しでも疑う事さえ「悪」となる絶対正義を御旗に、社会を巻き込む混乱を招いた(というか、純粋まっすぐ社会が巻き込まれていった)のは、昨今のジャニーズ騒動とよく似ているかもしれません。
前回言及した「鬼畜系」といった動きは、こうした「行き過ぎた浄化」へのカウンターとして生まれた側面がありましたが、問題なのは「カウンターでしかなかった」点です。
露悪的に悪趣味や不道徳を掲げても、表面的な形以上の信念や覚悟があったわけではなく、これは「〝大人への反抗〟ポーズを掲げるヤンキー」が、実は「閉鎖的なムラ社会そのものの体現」でしか無い欺瞞と非常に似ています。
「〝絶対正義〟に手放しで服従する」のも、「ただの逆張りのみの無思想で露悪に走る」のも、五十歩百歩の堕落でしかありません。
そうした現場に、ただの「クリエイターの言い分」を超えた、誰もが尻込みしていた角度から先頭をきって斬り込んでいったのがゴー宣でした。
1993年に続きます。