ここでは主に、昭和期の記録映像や教育映画、または個人所蔵のフィルムなどが保存目的で収集されており、単なるノスタルジーにとどまらない、大変貴重な資料群が構成されています。
それぞれの作品の内容をストレートに楽しむのはもちろん、ちょっと違った視点で鑑賞するのもおススメ。そんな観方のできる動画を何本かご紹介します。
まずは日本映画社制作の「生きているパン」
これは、パンの発酵の仕組みなどを解説した、一見ふつうの教育映画なのですが…
制作年が、終戦直後で食糧難も続く「1947年」、そして後援しているのが
農林省広報課
全国粉食普及会
全国製パン協議会
イースト協議会
こうした省庁や業界団体の後押しで、パン食を広めようという「プロパガンダ的側面」のある作品なのがわかります。
「新・ゴーマニズム宣言 12巻 誰がためにポチは鳴く」や「平成攘夷論」に収録されている「戦後生まれがアメリカに受けた屈辱」を読んだ事がある方はピンと来るかもしれませんが、大戦後、アメリカは余剰農産物を、食料支援の名目で日本に送り込んでいました。
画像引用:新ゴー宣「戦後生まれがアメリカに受けた屈辱」
実はゴー宣で読む前にも、むかし勤務していた業種について色々調べた際、この時期の日本でアメリカ主導によるパン食の「啓蒙」が行われていたのを知っていたので、ああ、これはその目的で作られたフィルムなのだなというのがわかりました。
画像引用:新ゴー宣「戦後生まれがアメリカに受けた屈辱」
何回、センモンカとマスコミが結託するとロクな事が無い…という事に翻弄されれば、我々は学ぶことができるのでしょうね(^^;)。
気持ちが沈んだら、生命の神秘にふれて気分転換しましょう。日映科学映画製作所による「受胎の神秘」。
これはタイトルのまま、排卵や受精といった生殖に関する事の解説映画なのですが、注目してほしいのが「音楽」(「注耳」かな?)特に10:30付近の受精シーンを盛り上げる音楽などは、昨今の教育映画ではまずありえない、凄まじく仰々しい(良い意味)オーケストラ演奏で、ミクロの世界で繰り広げられる壮大なスペクタクルに引き込まれます。
こうした表現にふれると、制度的な面での性別固執なんて本当に浅はかなものだという気持ちが、心の底から実感できます。未だに神武天皇のY染色体がどうとか言ってる輩には、映画「時計じかけのオレンジ」みたいに目ひらきっぱなしにさせてこのフィルムをループで観せた方が良いですね(笑)
映像に限りませんが、表現というのは時代や状況によりがらっと意味が変わってしまう事がままあります。それが残酷なまでに感じられるのが、福島第一原子力発電所の建設に関する記録映画「黎明」。
福島第一原発の名が出ただけで既にあらゆる感傷が生じますが、特に心がしめつけられるのが2:50付近の、建設地となる大熊町、双葉町周辺の地域に関するナレーション
「この地方一帯は、農業を主とする静かな田園地帯で、過去数百年に渡って地震や台風、津波などによる被害を受けたことがない」
両町の一部では2022年になってようやく避難指示の解除が始まりましたが、大半の人は避難先で新しい生活基盤を築いており、この土地に帰りたい意思を示す人はごく少数との事です。
「原発の宣伝」的な目的で作られたであろうこのフィルム、現在こそ本当の「観るべき時期」なのかもしれませんね。
チャンネルには膨大な数の動画があるので、また特筆すべき作品が見つかったら書こうと思います!