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高森明勅
2023.4.17 08:00皇室

北畠親房『神皇正統記』「神国」論のキーワードは「天照大神」

戦乱が続いた南北朝時代の人物で、南朝方の重臣であり、
中世における「神国」思想の大成者とされる、北畠親房。
その代表的な著書が『神皇正統記』だ。

同書の冒頭が「大日本は神国なり」で始まることは有名だろう。

では、日本は何故、「神国」なのか。
それは「天祖(=国常立尊〔くにのとこたちのみこと〕)はじめて
基(もとい)をひらき、日神(=天照大神)ながく統を伝へ給
(たま)ふ」、そのことは他国に類例を見ないからである、
というのが親房の主張だ。

『日本書紀』正文の冒頭に登場する国常立尊について、
国の基を開いた「天祖」と表現しながら、一方で当然ながら
天照大神こそ“皇統”の根源(皇祖)と位置付けていた
(この点は、同書中に同神を「皇祖」と明記していることからも
疑う余地がない)。

その上で、天照大神以来の皇統が長く受け継がれ、
断絶がないことを「神国」の根拠としていた。

更に、これまで皇位が正しく継承されて来たのも、
「我が国は神国なれば、天照太神(原文のママ)の御計(おんはからい)
にまかせ(任せ)られたるにや」という記述も見える。
これは、天照大神を“皇位”の根源とする歴史観を示している。
一般に、社会の中で武力が大きな価値を持つ時代には、世の風潮は
男尊女卑に傾きがちである。
南北朝時代もその例外ではなかっただろう。
それでも、皇位・皇統の根源は女性神である天照大神とする見方に、
揺らぎのなかったことが分かる。

追記

4月14日公開のsmartFLASHにコメントが掲載された
(タイトル、小見出し等は勿論、編集部による)。
同日、清話会の依頼により靖国神社にて昇殿参拝の後、
境内の靖国会館で講演し、更に遊就館でも展示物について解説した。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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