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笹幸恵
2023.3.26 14:48皇統問題

倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【10】

倉山満『皇室論』。
明らかな事実誤認、支離滅裂、意味不明が多すぎる。
一体いつまで続くのか。
今回は10回目。

【過去のブログはこちら】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【1】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【2】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【3】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【4】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【5】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【6】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【7】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【8】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【9】

第三章に行こう。
ここで倉山は秋篠宮家バッシングを取り上げている。
これがあまりに異常だというのはわかる。
ルサンチマンを抱えた人たちが、正義の名のもとに
反論できない人々に対して罵声を浴びせる。あまりに醜い。

が、倉山の言う
「皇位継承問題の核心は、悠仁親王殿下がおわすのに
秋篠宮家から皇位継承権を取り上げようとする議論の
根拠は何か、です」
は、全く論点がずれている。

秋篠宮家から皇位継承権を取り上げる云々ではなく、
少しでも皇位継承を安定的なものにするには
どうしたらいいか、これが核心だ。

相変わらず出発点(前提)がズレていて、
さらにそこに倉山の思い込みや都合のいい解釈が加わるから、
迷走しまくっている。

現在議論されている皇族数確保策についてはこんな具合一、女系容認
「悠仁親王殿下どころか愛子内親王殿下もまだこの世に
おられない時の議論ですから、女系容認の議論は、
する必要のない終わった話です。そもそも先例がありません」

男系男子に固執し、安定的な制度設計など念頭にない倉山は、
どうしても「終わった話」にしたいらしい。
頭が凝り固まっている。処置なし。


二、側室
「結論から言えば、側室制度はあまり意味がありません。
大前提として、子供が必ず生まれる技術が存在しないからです。
側室が何人いようが一人も子供を生まなければ意味がありません」

じつに乱暴な意見。
男系男子を維持することと側室制度はセットだ。
歴代天皇の半数近くが非嫡系であったことを知らないのか。
すべての火事を一人の犠牲者も出さずに消火できるわけではないから
消防署には意味がありません、と言っているようなもの。

三、女性宮家
「小室眞子さんが皇族の身分を保持した場合、
二つの問題がありました。
一つは、小室圭さんを皇族にしていいのか。
もう一つは、圭さんを「殿下」と呼ぶことができるのか」

さんざん秋篠宮家バッシングを批判しておいて、
あえてここは個人名で例を出す。非常に恣意的。
令和3年有識者会議報告書の「皇族数確保プラン」のひとつである
女性宮家の創設を念頭に置いて説明しているようで、
「つまり、女性宮家とは、皇位継承とは何の関係もない議論です」
言い切っている。
まともな読解力があるなら、まず皇室典範特例法の附帯決議の
「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」に
何ら合致していないと気づくはずだが。
報告書のプランは、安定的な皇位継承に何ら資するものが
ないと批判して然るべきだが。
もとより「女は排除」で凝り固まっている倉山にわかるはずもない。

女性宮家は女性皇族が当主となる(当たり前)。
その宮家に婿入りした男性は皇族となるべき
(民間人のままというのは現実的に不可能)。
そうなると当然「殿下」だ。話はそれで終わる。


四、旧皇族の男系男子の皇籍取得
「本来は皇族としてお生まれになるべきだったはずの人々に
親王宣下をするのはどうか、ということです」
「大事なのは、昨日まで国民だった方々が今日皇族になり、
明日天皇になる話を前提としないことです。
その方々の次の世代の方々が、生まれた時から皇族として
お育ちになる。そして、今の皇室の直系に近い方々とご結婚すれば
なお直系に近くなる、といった解決策が主眼です。
ここに、皇位継承問題の神髄があります」

神髄って。正気か。
ひとりの人間の人生を何だと思っているのか。
独りよがりの空理空論は害悪でしかない。
そして女性皇族を悉く排除、あるいは男系血統を補完する
存在としてしか見ていない。
もはや不敬を通り越して人非人。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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