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笹幸恵
2023.3.19 12:40皇統問題

倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【9】

倉山満『皇室論』。
明らかな事実誤認、支離滅裂、意味不明が多すぎる。
今回は9回目。

【過去のブログはこちら】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【1】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【2】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【3】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【4】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【5】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【6】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【7】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【8】

悠仁さまがいらっしゃる限り
皇位継承資格の拡大の議論など必要ない
と言い切った倉山、
それなのに「今は皇族が少なすぎ」
「皇統保持の危機」だと本書で述べている。
ならば直系のお子様を・・・とならないのが倉山脳。
なぜなら直系のお子様は「女」だから。
これで自分は男尊女卑ではないと思い込む
不思議な認知が倉山脳。

で、驚くべき持論を展開している。

「皇位継承者の数の不足の背景には、
皇族の方々のご公務が忙しすぎる、
ということがあります」

「しかし皇室においては、お世継ぎづくりが
最優先です。ご公務などはお世継ぎづくりの
後でいいのではないでしょうか。
『ご公務が忙しくてお世継ぎが生まれない』など、
本末転倒です」

「(悠仁殿下には)いっそ学校など行かずに
いち早くご結婚いただくことが何よりに
優先事項ではないでしょうか」


公務なんてどうでもいい。
さっさと子作りしろ。
勉強なんかしなくたっていい。
さっさと子作りしろ。

倉山はこう言っている。
正気か。

ご公務がどれほど大事であるかを理解していない。
天皇をはじめ皇族方が、どれほどご公務に誠心誠意
取り組んできたかを理解していない。
悠仁さまの学びすら取り上げようとしている。
皇族は子作りマシーンか? ロボットか?

ここに猛烈な違和感を覚えない輩は、
「尊皇心がある」などと決して口にすべきではない。
子供(しかも男)さえ生めばいいと言っているのだから。
彼らが生身の人間であることすら否定しているのだから。
一体何サマのつもりか。

倉山は、これまで散々「諫言」という名で
天皇や皇族に文句をつけてきた自称保守オッサンと
まったく変わらない。
こうした考えが雅子さまを苦しめてきたことに、
なぜ気づかない?
こうした考えが悠仁さまのお妃選びを困難にするであろうことに、
なぜ気づかない?
こうした押しつけこそが皇統保持の危機になるというのに。
そもそも皇位継承者の数が不足している理由として
公務の多忙をあげているけど、全く根拠が示されていない。
公務を減らしたら子供(しかも男)が増えるとでも?

バカか。
(知ってたけど)


なお、このくだりで高森先生の著書『「女性天皇」の成立』の
一文を紹介している。
(高森氏は著書で「皇族減少に伴う公務の負担軽減策など
誰も求めていない」と言っているが、
この状況で公務軽減をしなければどうなるか・・・云々)

高森先生の著書を読んだ人ならわかると思うが、
ここは、主題から全くかけ離れた部分である。
かつて公務の負担軽減策として「結婚後の皇族女子を
特別職の国家公務員と位置づける(=皇女プラン)」が
にわかに注目を浴びたが、これを批判している一文に過ぎない。
取り上げるとこ、そこか!?!?

本書では、女性・女系にまで皇位継承資格を拡大することが
いかに重要か、歴史的にも理にかなっているかを縷々述べている。
そこは完全スルーか!?!?

正論には耳をふさぎ、独りよがりな解釈、都合のよい切り取り、
迷走しまくって、挙げ句に非現実的な「自分の理想」を
皇室に押しつける。

何度でも言う。
こんな人が「皇室史学者」???
ブラック・ジョークにすらならん。
 
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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