皇統問題に関する質問に対し、長島議員から長文の返答があった。
これを紹介すると共に、私から再度の質問(後半)を。
(長島議員のツイッターに対する最初の質問ブログはこちら)
https://www.gosen-dojo.com/blog/38867/
(長島議員の返答&笹の再質問〈前半〉はこちら)
https://www.gosen-dojo.com/blog/39006/
4 男系継承のままでは、悠仁さまのお妃が絶対に男児を産まなければならない。それを強要することは妥当か。
皇統の歴史に則り、可能な限り男系継承を追求するべきであるとの考え方に些かの揺るぎはありませんし、ご懸念の点については、悠仁親王殿下及び旧宮家子孫の方々のお子さまが全員女子だった場合に、初めて他の手段を検討する必要性に直面するものと考えます。少なくとも、現状の皇位継承順位を変更する必要性を認めません。また、男児出産の圧力(ここで敢えて「強要」との文言は用いません)につきましては、仮に「直系継承」を採ったとしても、男女児に拘わらず皇室を存続させるためには、出産圧力は同様にかかってくるものと考えます。むしろ、皇統における重要な先例の一つである「傍系継承」(皇室の藩屏として直系以外に幾筋も傍系を準備しておく)に従うならば、直系のお后である一人の女性に過度な出産圧力はかかりにくくなるものと考えます。
(再びの質問)
「子を産め」という圧力と、「男児を産め」という圧力を同等に語って良いと本当にお考えですか? 代議士の言は、「どちらにしたって出産圧力がかかるんだから、男児に限定したって問題はない」と読み取れます。これは真意ですか?
また、直系であろうと傍系であろうと、男系男子継承に固執したままでは、今後も男児誕生は「カミカゼ」で、女児誕生は「なんだ、女か」という差別的風潮を生み出します。これを、変わらぬ日本の未来の姿として代議士は望みますか。
5 旧宮家系の男系男子の養子案は「門地による差別」になるのではないか。
この点が、現行憲法上、最大の争点になると思います。但し、皇位の世襲による皇室の存在は、憲法14条の法の下の平等の例外とされることに異論はないと思います。それ故、皇室典範第一条が女性の天皇を禁止したことは憲法違反でないと解されるべきで、それが政府見解でもあり憲法学界の通説です。それでも、かつて皇族だった旧宮家の子孫とはいえ今日では一般国民である方々を、他の一般国民とは(その出自の故に)一線を画して皇籍を取得する、あるいは養子として皇室に迎えることについて、門地による差別に当たるのではないかとの疑義が呈されることには一理あると考えます。ただし、これも憲法学の最高権威の一人である芦部信喜東京大学教授が唱えた「合理的区別論」に従えば、①目的が必要不可欠な公共的利益に資するもので、②その手段が必要最小限度のものであれば、「合理的区別」として差別に当たらないとされますから、憲法および皇室典範により認められた皇統に属する男系男子による皇位の継承を確保する(との公共的利益に資する)目的に照らし、恒久法ではなく「特措法」という必要最小限の手段で、旧宮家の男系男子孫を養子に迎える、もしくは皇籍を取得していただく法制度を整えることについては、「門地による差別」に当たらず、「合理的区別」と解すべきと考えます。しかも、皇族になられるということは、ほとんどの人権の行使を制約されることを意味し、およそ「特権」と呼ぶにふさわしいものではないことも付言しておきます。
(再びの質問)
憲法の要請は「世襲」であって、「男系男子の継承」ではありません。憲法の要請に皇室典範の要請を優先させることはできません。その手段が必要最小限という条件の「合理的区別論」に従うのならば、まずもって世襲の障害となっている「男系男子」の縛りを解除するなどの手立てを尽くしていなければなりません。代議士の言う合理的区別は成立しませんが、これをどうお考えになりますか。
6 女性・女系天皇が即位した場合、敬愛はなくなるのか。
天皇陛下は勿論敬愛していますし、仮に女性天皇、女系天皇となろうともそれは変わりません。しかしながら、今ここで議論しているのは「皇位継承のルール」の話です。繰り返し述べてきましたように、有史以来126代、約2000年にわたり例外なく男系継承されて来た皇統の歴史の重みを考えれば、可能な限り男系で継承していくための方策を追求すべきであると考えます。
(再びの質問)
まったく謎なのですが、女系天皇になろうとも敬愛の念が失われないのであれば、なぜ「皇位継承のルール」として双系継承を容認できないのでしょう?
また「可能な限り男系で」というのも、問題の先送りでしかありません。4では、「悠仁さまのお子様が全員女子だった場合に検討すればいい」と書かれていますが、それには悠仁さまがご結婚され、お妃が妊娠し、無事に出産しなければなりません。その保証がない以上、皇統問題は喫緊の課題であると認識しますが、代議士はどうお考えですか。
7 男系の血統が正統だというのは現実的な視点で熟考された上でのことか。
上述したように、皇位の男系継承は歴史的事実であり決して観念論ではありません。日本国が日本国であり続けていくためにも、皇統の歴史と伝統は今後とも堅持されるべきものであって、その正統性こそが天皇の権威を確立せしめる本質だと考えます。したがって、その皇位継承を安定化させるために、現在の閑院宮系に加え、「世襲親王家」たる伏見宮系に連なる「皇統に属する男系男子」のご子孫に新たに皇族に加わっていただき、皇室の藩屏としていざという時のためにご準備いただくことこそ最も現実的な方策であると考えます。
(再びの質問)
旧宮家の男系男子が皇族になることが「最も現実的」であるならば、対象となり、その意思がある方と、その方が皇族として国民に受け入れられる手立てを即刻公表してくださいませんか? そうでなければ、「最も現実的な方策」だとは言えないと思うので。
長島議員へ、最後にひとこと
安全保障政策と皇統問題は似ているところがあると思います。
安全保障政策は、その時々の国際情勢や国家間のパワーバランス、はたまた国内情勢も見極めながら舵取りをしていく必要がありますね。「これをやれば正解」という答えはなく、都度、臨機応変に対応してこそ末永く国家の安全は保障されます。
同じように、天皇を戴く我が国の制度を末永く続けていくためには、その時代に応じた知恵と工夫が求められます。何が伝統で、何が因習なのか。これを見極め、変えていくことで守れるものがあります。不易流行です。
男系男子が正統である、歴史の重みであると縷々語り、また憲法学の権威の言葉も数々ご紹介くださいましたが、それは、たとえば現代の安全保障を考える際に佐藤鉄太郎の『帝国国防史論』を金科玉条とするようなもの。もちろん歴史的経緯を踏まえることは大切ですが、これを絶対普遍の真理だと説いてしまえば、たちまち「信仰」となります。それがいかに奇異なことか。この意味が、長島議員ならおわかりになると思いますが、いかがですか。