倉山満の『皇室論』読了。
全4章から成り、各章に補講がついている。
相変わらず「先例の積み重ねが伝統」
「先例が掟」などと言っているが、
本書を読んで、倉山は中世(ときどき明治時代)の感覚でしか
皇室を語れないのだなということがよくわかった。
なぜ先例原理主義かというと、
大学時代に日本中世史の授業で
「皇室は先例を貴ぶ世界、新儀は不吉」と習ったから。
それしか根拠を述べていない。
じゃあ古代はどうなるの。先例すらもないじゃない。
自分の知っている範囲でしか語ろうとしないから、
いまどき「不吉」とか「吉例」とか言い出す。
古代から皇統を辿ってみせるが、
当時の事情も詳しく精査しないまま(中世を除く)、
「男系継承はここでも守られた」と、
さも大昔から「男性の血筋」が尊ばれていたかのような書きぶり、
読者の誤解を大いに招く。
女性宮家の説明についても、
なんだか自信満々で「こうだ!」と説いているが、
それって自分が望む女性宮家の姿でしょうが、
としか言いようがない。
結婚して、妻が皇族、夫が一般国民。
こんなリアリティのない話はない。
だが中世で脳みそが止まっている倉山にはわからない。
憲法第14条(門地による差別)に対する反論も、
全く意味がわからない。
倉山は、美智子さまや雅子さま、紀子さまが
皇族になったのは憲法違反だというのか!?
といちゃもんをつけている。
いやいや、結婚したからでしょうよ。
なぜこの当たり前の事実を無視するのか、全くの謎。
一般国民である男性はひっくり返っても皇族にはなれないから、
女性差別ではない、むしろ男性差別だと言う。
違うでしょうよ。
現状では、女性はひっくり返っても天皇になれない。
女性皇族は、一般人と結婚したら
(相手に合わせて)一般人になる。
だから一般男性はひっくり返っても皇族になることはない。
女性差別の延長線上にそれがあることに、
いい加減気がついても良さそうなものだけど。
自分の詭弁を、さもまともな論であるかのように
堂々と述べるのだから、読者がひっくり返るよ。
あげく、悠仁さまはお世継ぎをつくることが大事だから、
公務など減らせ!!!と書く。
尊皇心があるように見せておきながら、
これまで天皇陛下がなさってきたことを
何一つ理解しない、硬直した頭脳。
伝統という名のもとにそれを強制してきたことに、
皇族の苦しみがあることに思いが至らない。
結局、自分だけが大事なのだ。
中世史をきっちり学んだ自分の頭脳だけが
一番かしこいと思っているのだ。
その割に意味のわからないところで小室圭さんを
例に出してきたりする。
「皇統問題は難しい」などと言って、
自分が教え諭す立場を取っているが、
一番わかっていないのは倉山なのではないかと思う。
都合のよいすり替え、曲解が甚だしい。
「決定版」などと銘打っているが、
ツッコミどころ満載の一冊。
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