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トッキー
2022.8.30 11:00メディア

藤井聡が依拠する、伊藤貫の「国際情勢認識」の正体

クライテリオン論破祭り第8回!

表現者クライテリオン編集長・藤井聡氏が「プーチンが戦争を起こした状況は、戦前の日本と似ている」とする根拠として挙げた、同誌7月号・伊藤貫氏の論稿検証の4回目。ちょっと長くなりますが、伊藤氏についてはこれで終わらせます!

伊藤氏の「アメリカがロシアを追い詰め、ウクライナ戦争を起こさせた」論、アメリカがロシアに経済戦争を仕掛けたという面はあるかもしれないけれども、たとえそれを考慮してもウクライナ侵略を正当化できる論拠には全くならず、ましてや戦前の日本と似ているところなどどこにもないということを、前回まで論証してきました。

今回は伊藤氏の論稿の終盤を読み解いていきます。ただし正直言って、もうこの辺まで来ると、私には全くついていけません。

伊藤氏によれば、米政府、特にその内部のネオコン・グループは、ウクライナを利用してロシアを屈服させようと以前から狙っていて、2010年に親露派のヤヌコヴィッチが政権に就くと即座に「秘密工作」を始めたのだそうです。
そして、「国務省とCIAは二〇一四年二月、キエフ(キーウ)でクーデターを起こすことに成功した」と伊藤氏は書いています。

2014年のウクライナの「マイダン革命」は、伊藤氏によればアメリカが起こしたもので、「その実態は『民主的な革命』ではなく、国粋主義的なレイシスト右翼による流血クーデター」であり、キーウの米国大使館でビクトリア・ヌーランド国務次官補(現・国務次官)が破壊活動を煽動・指揮し、次の大統領を誰にするかまでウクライナ人に命令していたそうです。
ただし、ヌーランドがクーデターを指揮していたとする根拠は、この論稿のどこにも書かれていません。

そして、伊藤氏は続けてこう書くのです。
「ウクライナの親露派政権が米政府によるクーデターで破壊され、隣国ウクライナがアメリカの実質的な属国となってしまったのを見たプーチンは、クリミア半島とウクライナ東部ドンバス地域を占領した」
プーチンに領土的野心は一切なく、ただアメリカの陰謀に追い詰められて、やむなくクリミアとドンバスを占領したんだそうです。

……バカバカしくなってきたので端折りますが、その後も「ネオコン族と米政府内の抗戦派とウクライナの国粋右翼」がロシアを追い詰めたために、プーチンはウクライナ侵攻を決意したという話が続きます。

その上で、伊藤氏はこう述べるのです。
「現在のウクライナ人は、米露間の覇権戦争に利用されているだけである」
「ウクライナの内政は、他の欧州諸国よりもはるかに腐敗している。現在のウクライナは、真の法治国家になれない」

よくもまあ、ここまでウクライナ人を侮蔑できるものだと思います。
何よりも呆れるのは伊藤氏が、ウクライナ人は自分の意思というものを一切持っていないと思い込んでいることです。
伊藤氏は、ウクライナ人は単なる操り人形だと決めつけ、ひとかけらも疑っていません。

ウクライナ人の国際政治学者グレンコ・アンドリー氏によると、プーチンは国際関係について「主体を持っているのは大国だけ。他の諸国は大国に動かされる客体にすぎない」と認識しているといいます。
プーチンは、大国以外は自分の意思を持っていないと思っているのです。
その上で、グレンコ氏はこう述べています。

「ジョージアやウクライナなどで一時期に起きた大量デモに伴う政権交代(いわゆるカラー革命)も、プーチンの頭の中では西洋諸国が首謀したものということになっている。民衆が自国の独立のために自主的に立ち上がり、政権交代を起こすなどということは、プーチンの世界観では起きるはずがない出来事なのだ」(『プーチン幻想』PHP新書)

………あれ?
これって、伊藤氏が言ってることと全く同じじゃないですか!

プーチンは、本当にウクライナ人には自分の意思がないと思っていました。
だからロシア軍が侵攻したらウクライナ人は抵抗せずに受け入れ、たやすく全土を掌握できるという、甘すぎる見込みで開戦したのです。

おそらく今でもプーチンは、ウクライナ人はアメリカに操られて戦っているものだと思っているのではないでしょうか。

伊藤氏もおそらく、ウクライナ人が現在、自らの意思で、自国の独立と民族の誇りを守るために戦っているのだということなど、想像もつかないのでしょう。

ウクライナ人に主体的な愛国心と国防意識がなければ、あんなに困難な戦いをあれだけ高い士気を維持して続けることなど不可能だという常識的な見方が、伊藤氏には決してできないのです。

何のことはない。伊藤貫氏は反米のあまりに、頭の中が完全にプーチンと同一化してしまっているのです。
伊藤氏が客観的な世界情勢だと思っていることは、実は「プーチンの妄想」なのです。
そして藤井聡氏は、そんなものを信用しているのです。
藤井氏はもはや「どっちもどっち論」ですらなく、「ロシアべったり論」になっています。
これ、クライテリオンにとっては致命傷じゃないですかね?

 

で、藤井さん、100万歩譲って伊藤氏の説が正しいと仮定して、それでどうして「ロシアにとってのウクライナが、日本にとっての満州」で、両者が似ていることになるんですか?
満州でアメリカが秘密工作を仕掛けて、クーデターを起こしたことなんてありましたっけ?
満州国は滅亡するまで溥儀が皇帝だったはずですけれど?

 

【クライテリオン論破祭り】
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