皇位継承の在り方について、男系限定か女系容認かの
態度を明らかにせず、しきりに皇室ご自身のお考えを
最優先すべきだと言いながら、肝心な皇室のお考えを
謙虚かつ懸命に拝そうとする姿勢がまるで見えない人が、
時折いる。
要は、国民としての責任を回避して、
ひたすら問題解決の“先延ばし”を図っているだけ
(又は本音としては無関心)。
皇室の方々は、憲法第1条及び第4条第1項の規定によって、
皇位継承の在り方について、制度的な部分に直接、
言及することは制限されている。
このことは、天皇陛下や上皇陛下がこれまで、
記者会見でこの点に関わる質問が出されるたびに、
直接の回答を控えて来られた事実によく示されている。
皇位継承の“当事者”であられる方々のご発言を封じるのは、
改めて言うまでもなく非人道的かつ理不尽この上ない
仕組みであるが(私自身は過去にこの点への問題提起を
何度も繰り返している)、国民も政府・国会もそれを放置して来た以上、
さしあたりその制約を踏まえて、わずかな手がかりから
皇室のお考えを拝察する以外に方法はない。
皇室ご自身のお考えを拝する上で、平成24年春から同31年にかけて、
月1回程度というハイペースで、天皇陛下と上皇陛下と
秋篠宮殿下のお3方が、皇室の課題などについて話し合いを
重ねて来られた事実が、重要だ(最後の三者会談は平成31年4月24日)。
そのメインテーマが皇位継承の在り方であったことは、
たやすく想像できる。
従って、少なくともこのテーマを巡っては、
お3方の間に既に合意が出来ていると考えるのが、自然だろう。
それを前提にすると色々と見えてくるものがある。
①秋篠宮殿下が、令和の時代を迎えても、
次の天皇になられることが確定した地位を示す「皇太子(皇太弟)」
という称号を辞退され、「秋篠宮」という“傍系”であることを
表示する宮号(みやごう)をそのまま維持されたこと。
②秋篠宮殿下が将来、即位を辞退されるとのご意向が
メディアで報じられ(「朝日新聞」平成31年4月21日付)、
宮内庁もそれを訂正しなかったこと(即位辞退は制度上は可能。
皇室典範第3条。園部逸夫氏『皇室法概論』参照)。
③秋篠宮家として、皇位継承の在り方は「長子優先」が
望ましいと考えておられるらしいこと
(長子優先ならば、男女の性別に関係なく天皇の第1子〔長子〕が
優先されるので、敬宮〔としのみや、愛子内親王〕殿下が
秋篠宮殿下より優先され、次は「愛子天皇」という結論になる)。
④上皇陛下は将来、敬宮殿下が即位されることを
望んでおられるとの証言が既に紹介されている
(奥野修司氏『天皇の憂鬱』)。
①~④は全て整合する。
お3方の間で、どのような合意に達しておられるかは、
ほぼ明らかだろう。
敬宮殿下が、ご成年を迎えられた際の記者会見
(令和4年3月17日)で、関連質問へのお答えとして
「これからも長く(両陛下と)一緒に…」とおっしゃられたことも、
そうした文脈の中で理解すべきだ。【高森明勅公式サイト】
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