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高森明勅
2022.4.11 09:00皇統問題

旧宮家「養子縁組」プラン合憲論はやはり成り立たない

先日、憲法学界の重鎮というべき権威ある学者の
講義を拝聴する機会に恵まれた。

印象的だったのは、他のあらゆる難題に明快かつ
説得力のある説明をされていたこの学者が、
質疑応答の中で出てきた
政府が唱える旧宮家の
「養子縁組」プランの合憲性への
疑念についてだけは、
(あらかじめ想定できた質問だったはずなのに)

ほとんどシドロモドロになってしまい、遂に筋の通った
回答を
提示することができなかった事実だ。

わずかに、憲法第2条に規定してある「世襲」が
男系による継承を
要請しているとすれば、
これは憲法上の要請だから、
第14条の例外として
(その要請に応える為の)養子縁組は

認められる―という独自のロジックをちらりと示されたものの、
講義の中で憲法の「世襲」は“皇統に属する子孫による継承”以上の
ものは要請していない(つまり男系でも女系でもよく、男子でも
女子でもよい)ことを詳しく説明されていた
(それが学界の多数説であり、政府見解でもある)ので、
そうした言い分は残念ながらご自身の論理に照らして成り立たない
(だからご本人も強くは打ち出しておられなかった)。

以前、同じく憲法学者の百地章氏が唱えられる
養子縁組プラン弁護論が、とても支持できないことを述べた
(拙著『「女性天皇」の成立』67~69ページ、令和4年1月30日の
ブログ「旧宮家系男性“養子縁組”プランはやっぱり『門地による差別』」など)。

この度、頭脳明晰な学界の権威者が結局、合憲論を
組み立てられなかった様子を拝見して、

養子縁組プランは「門地による差別」で憲法違反との確信を一層強めた。

追記

朝日新聞の月刊誌「Journalism」4月号の特集は
「皇室は持続可能か」(4月8日発売)。
拙稿も掲載されている。

【「旧宮家系男性“養子縁組”プランはやっぱり『門地による差別』」】
https://www.a-takamori.com/post/220131

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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