ゴー宣DOJO

BLOGブログ
高森明勅
2022.2.28 09:00皇室

天皇陛下は災害への備えと手助けを私共に呼び掛けておられる

天皇陛下のお誕生日に際してのご会見でのご発言では、
大規模災害に関わる言及に少なくない部分を割いておられた。
それだけ、陛下のご懸念が深いことを示している。
これについても、陛下の視野は国内だけでなく、
自ずと海外にまで及んでいる。

引き続き被災地に心を寄せていく

「東日本大震災の発生から間もなく11年を迎えます。
この震災により、2万人を超える数多くは方が亡くなったり、
行方不明になったりしたことは、今思い出しても深く心が痛みます。

その後の復興の過程で、人々の生活や産業を支える
社会基盤の整備等は進んだものの、精神的なサポートを必要とする人が
近年になってむしろ増えていると伺うなど、
本当の意味での復興はまだ道半ばにあるものと思います。
私は、雅子と共に、引き続き被災地に心を寄せていくつもりです」

―「精神的なサポートを必要とする人が近年になってむしろ増えている」という、
一般に見逃されがちな事実にまで、しっかりと目を届かせておられる。
陛下が被災地の実情に細やかにお心を配って下さっていることが分かる。

その上で、
「私は、雅子と共に、引き続き被災地に心を寄せていくつもりです」
と言い切っておられる。
上皇・上皇后両陛下が現地にお寄せになっていたお気持ちを、
いささかもゆるがせになさらず、まっすぐに受け継がれている
ことが窺えて、有難い。
これこそ、伝統と品格を備えた世襲の君主制のみが持ちうる、
慈愛の自ずからな継承だろう。

故・宮崎淳氏の献身など

「思い返せば、東日本大震災直後には、現地に駆けつけたボランティアに
多くの被災者が勇気付けられたものと思います。
海外の多くの国々からも支援物資等が届けられ、
ボランティアが被災地に駆けつけてくれました。

先月の海底火山の噴火による被害が伝えられるトンガの皆さんからも、
様々な支援を頂いたことは記憶に新しいところです。
その時の感謝の気持ちは今なお色あせるものではありません。
ここに改めて、この度のトンガの噴火により被災された方々に
心からのお見舞いをお伝えいたします。

東日本大震災の発生と同じ平成23年、
トルコで起きた震災に日本から支援活動のために赴いていた
宮崎淳(みやざき・あつし)さんが、余震により亡くなりました。
舗装道路などのインフラも十分でない被災地において、
見ず知らずのトルコの人々のために力を尽くし、亡くなったとして、
当時のギュル大統領は、トルコ国民の心を動かす
献身的な活動をした宮崎さんをいつまでも忘れない、
と上皇陛下に親書を送られました。

そして、以後、トルコの各地で宮崎さんの名を冠した
公園や学校が開設されているとの報道に昨年接したことも、
トルコの人々の温かい気持ちと共に印象に残りました。

災害により困難な状況に陥った人々を助けようと尽力する
災害ボランティアの精神はまことに尊いものです。
日本の多くの人々が国内外で災害ボランティア活動に
従事してくれていることに敬意を表したいと思います」

―先頃、激甚な噴火災害に見舞われたトンガからの、
東日本大震災時におけるわが国への支援に対する感謝を、
災害へのお見舞いの気持ちと共に、今のタイミングで
改めてお伝えになられた、陛下の思いやりの深さ。

更に、故・宮崎淳氏を巡るトルコ大統領から
上皇陛下への親書と、同国の人々の気持ちを伝える
ニュースを取り上げられることで、「災害ボランティア」の
意義を抽象論ではなく、感激を伴う実話として語られる
陛下の姿勢には、深く共感できる。
トンガの件もあわせて、国境を越えて織り上げられる
“善意のタペストリー”を目の当たりにするようだ。

被災した人々に寄り添い…

「我が国では、今後、いくつかの大きな地震の発生が予測されています。
また、近年、大きな被害をもたらす豪雨災害等が頻発しており、
発災時に多くの人が助けを必要とする場面はより多くなると
予想されます。

そのため、私たち一人一人が防災や減災の意識を高め、
災害に対して自らの備えをするとともに、
どこかで災害が起きたときには、一人一人が、自らのできる範囲で
被災した人々に寄り添い、その助けとなるべく行動できるような
社会であってほしいと願います」

―大地震をはじめとする大規模な災害は、
今や誰にとっても決して他人事ではない。
陛下の切実なお言葉でそのことを改めて痛感する。

「自らの備えをするとともに、どこかで災害が起きたときには…」
とのお呼び掛けは、各自がくれぐれも銘記する必要があるだろう。

2月11日の「くにまもり演説大会」で防災・減災への心構えを訴え、
見事に準優勝されたラジオ・アナウンサーのSさんも、
彼女の提案で番組内に新設されたという(災害に)「備えましょう」
というコーナーの中で、陛下のお呼び掛けについて
紹介されてはいかがかと思う。
それとも、既に紹介済みかな。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

次回の開催予定

INFORMATIONお知らせ