これまで禁止されて来た皇族の養子縁組を認め、
被占領下に皇籍離脱を余儀なくされた、いわゆる「旧宮家」系の
国民男性を新しく養子として皇室に迎え入れること
(皇籍取得)を可能にする、という旧宮家案。以前、対象者は未婚の成年男性というのが、当然の前提だった。
しかし、なかなか候補者が見つからない為なのか、
未成年者が視野に入って来た。これについて、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が以下のような指摘をされている。
「(旧宮家系の)お子様1人もしくは2人を別のところにお連れして、
『今日からあなたはここでほかの方のお世話を受けながら暮らすのよ』というのは、
どう考えてもお気の毒というか、人間の親、子どもの心情として
つらいものがある。
…御家族全体で…(皇室に)入っていただくのが一番自然ではないか」
(4月8日、有識者会議ヒアリング)と。民間とは全く環境・条件が異なる皇室への養子縁組を、
現実的な選択肢として考えるなら、
「人間の親、子どもの心情としてつらいものがある」ので
「家族養子」という形を採るべきだという主張だ。これは、確かに当事者の心情に配慮すると、
そのような考え方になるのは、理解できる。これは裏返して言えば、家族から切り離された
単独の養子縁組は「どう考えてもお気の毒」だから
採用すべきではない、という考え方になろう。しかし憲法学者の百地章氏は、こうした提案に対して、
次のような意見だ。「具体的に家族養子というような話もこれまでに出たようであるけれども、
私は、それでできれば結構だと思うが、ちょっとハードルが高いのではないか」
(5月10日、同ヒアリング)と。同氏はハードルの具体的な中身については言及されていない。
しかし、皇室の尊厳、「聖域」性を大切に考えるならば、
長年、民間で暮らして来た家族が全員、揃って皇族の身分を
取得するというのは、皇室と国民の厳格であるべき「区別」を
ないがしろするやり方で、いくら何でも乱暴過ぎるというのが、
常識的な感覚ではあるまいか。更に、当事者としても、たった1人でさえ、
皇籍取得を決意するには相当のプレッシャーを感じるはずなのに、
家族全員が一致して、従来の仕事も人間関係も断ち切って、
その覚悟を固めるというハードルは、ますます「高い」はずだ。家族養子のリアルな困難さを直視した意見として、これはこれで頷ける。
このお2人の意見をどちらも採用すると、どういう結論になるか。旧宮家案は「家族養子」でなければ「お気の毒」で
「(当事者の)心情としてつらいものがある」一方、
それを実際に採用するには「ハードルが高い」。
つまり、旧宮家案は無理、という結論に落ち着く。【高森明勅公式サイト】
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