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高森明勅
2021.9.17 08:00政治

憲法に軍隊の規定が無いので自衛隊は役所として法律に縛られる

『海幹校戦略研究』第11巻第1号に掲載の論文
「日本と諸外国の防衛法制の比較研究」(熊取谷行1佐ほか)によって、
以下の実情が明らかになった。

「他国の場合は憲法で軍隊をしっかり位置付ける一方、
その権限や行動を縛る国内の法律を持たないのに対し、
日本だけは憲法には何の規定も置かず、
自衛隊の権限や行動は全て法律による制約を押し付けられている」

憲法での位置付けと法律での権限や行動の制約が、
ちょうど日本と諸外国では逆になっている。

ここで注意すべきは、それが決して偶然ではないということだ。

憲法に「軍隊」の地位、役割、任務等の規定があれば、
軍隊は“行政の外”に置かれるので、その権限や行動は
国内の法律に縛られない。

逆に憲法にその規定が無ければ、
行政の外に位置する軍隊の保持は認められない。
よって、たとえ武装した実力組織でも、法治国家の
「行政の基本原則」にのっとり、権限や行動は全てに
法律に根拠を求める他ない。

そこに、自衛隊の「世界で唯一の特殊性」があった。

しかし、そのような武装しただけの“役所”では、
変幻自在な侵害行為、武力攻撃に対応できず、
「国家防衛の役割」を果たせない(=個別的自衛権を十分に行使できない)。
だからこそ、あらゆる国の軍隊は行政と区別されている。
かくてわが国の場合は、集団的自衛権以前に、
“個別的”自衛権すら満足に行使できない状態に置かれ続けている。
それを補って来たのが、強大なアメリカの軍事力に他ならない。

日本の極端な対米依存の根っこにあるのは、
このような構図だった。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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